~交わる、その先へ~・3
そして別の場所では。
「あと一体、ですね……」
女性の上半身に蛇の下半身をあわせたような怪物を前に、フィノ達三人が対峙していた。
かなりの数を相手に戦ってきたのか彼女達もそれなりに消耗しているようだが、それでも相手の方が弱ってきている。
増援が現れる前に、畳み掛けてしまわねば……イシェルナとダクワーズの視線がかち合う。
「お願いっ!」
と、フィノが飛ばした光弾が魔物に命中し、よろめかせた。
「イシェルナ、片をつけるぞ!」
「おっけー、ダクワちゃん♪」
二人は同時に地を蹴り、まず勢いを乗せたイシェルナの拳が一撃、魔物の頭を揺らす。
「捉えられるか!」
「見惚れていいわよん☆」
それを皮切りに、目にもとまらぬ速さで繰り出される拳に脚、突きの嵐。
「はっ、たあっ!」
「よっ、せいっ、そぉれ!」
途切れることなく、お互いに当たらないギリギリを攻めながら舞う二人も、そして飛び散る鮮血でさえも花弁を思わせる華麗さで、フィノは思わず「すごい……」とこぼす。
「そろそろフィナーレといきましょうか!」
イシェルナの合図で、いつまでも続くかと思われたダンスはふいに一拍の間をあける。
「いっくわよー!」
「仕上げだ!」
姿勢をうんと低くした二人が目視できるほどのマナを纏わせ、最後に放ったのは……
「「でやぁぁぁぁぁっ!」」
ドゴォッ!
下からの鋭い蹴り上げ。
ただの蹴りじゃない、浄化の力と全身全霊をこめたそれは、見た目以上の威力だった。
宙に打ち上げられた魔物は断末魔をあげる間もなく光の粒となって散り、そのまま地に落ちることはなかった。
『よっしゃあ決まったア!』
『男が出てるよ、月光の女神』
美しく繊細な女神の衣装からのぞく逞しい腕でガッツポーズをきめる光精霊に、ランシッドはそっとツッコミを入れる。
……ともあれ、これで彼等を待ち伏せていた魔物は全滅しただろう。
「ようやく先に進めるわね……あら?」
彼女達が安堵の表情を見せると、奥の方にさらに先へと続くのであろう道が。
「あの魔物が守っていたのでしょうか?」
「どのみち、我々には進むしかないだろうな」
『他に道は見当たらないし、ね』
光を司る月光の女神が言うのなら、そうなのだろう。
イシェルナの隣で闇精霊もまた、頷いた。
「鬼が出るか、それとも……」
ダクワーズが呟くと「今までさんざん出たじゃない」とイシェルナ。
「そうですね。もう怖いものなしです!」
可憐な少女の外見で、フィノは勇ましく杖を握り締めた。
「……そうだな。行こう」
三人は臆することなく先へ……足取りはしっかりと、力強く進んでいった。
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