~合流、そして~・1

 中央大陸グランマニエの中心、王都にて。

 分散して各地でそれぞれの役割を果たして来た一行は、マーブラム城の玉座の間、再びその主となったモラセス王の前に集合した。


 実際には途方もない距離でパッと行って戻ってくるなど普通に考えて不可能なのだが、東大陸組は九頭竜の路を使い、北大陸組はいつかのように霊峰の聖依獣ソルヴェンの転移術で送り届けて貰ったようだ。


「……そうか、そっちもいろいろあったんだな」


 チーム毎の行き先で起きた出来事、情報を交換しあったデュー達は、ある者は腕組みをして天井を仰ぎ、またある者は口許に手を置いて考え込む。


 東ではモラセス王やザッハ以外にも魔物に憑かれた人間……ワッフルがいて、戦うことになってしまった。


 そして北の霊峰ではトランシュとの再会と、大精霊の存在。


「王都はこれといって事件はなくて平和でしたけどねー」

「強烈な出迎えはあったがの。その平和を確かめられたのが何よりじゃ……誰かさんがはしゃぎ回って飛び出していった時はどうなるかと思ったのー」


 ちくちくと、孫から祖父へのささやかな口撃。

「俺ははしゃいでた訳ではない」と小さく抗議が聞こえたが、過ぎてしまった今では恰好のネタ扱いだ。

 もう一人のはしゃぎ回って飛び出していった人物も、早く帰ってきてこうやって笑い話に出来ればいいのにとオグマはこっそり思いを馳せる。


「……で、トランシュはどうしている? まだクリスタリゼか?」


 若干苛立ち、というより拗ねた風な声音で王がオグマに尋ねる。

 その威圧と眼力(しかし本人にそのつもりはないらしい)は気の弱い人間なら震え上がってしまいそうだが、直前の流れもあってここにそういった者はいなかった。


「彼も一緒に王都に戻って来ています。ただ、先に寄るところがあると言って別れました」

「そうか……」


 モラセス王としてはいろいろ思うところがあるのだろう。

 溜め息と共に聞こえた声には、複雑な感情が入り交じっていた。


 と、


『えーと、そろそろえーかの?』

「!?」


 突然脳内に響いた声に、デュー達からどよめきがあがる。


「あ、頭の中に声が……なにこれ怖っ!」

『怖くなーいぞ、むーちゃん通信じゃよ』


 声の正体は、世界の狭間にあるという聖依獣の隠れ里から。

 姿は見えないが一度見たら忘れられない巨大モップ、もとい長老ムースのものであった。

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