0
山手線の電車が大塚駅のホームをゆっくりと出発する。茜色の車内に、四人の影が長く伸びていた。
「けっきょく、どこにも降りなかったな」わたしは言った。
「そうだね」ハルは微笑んだ。
座席の隣に目をやる。アキとフユは互いに肩をもたれかけるようにして寝息を立てている。
「きっとどこでもよかったんだと思う」わたしは言った。「わたしはただこうして四人で遊びに行きたかったんだだけだったんだな」
「そうだね」ハルは繰り返した。「四人ならきっとどこに行っても楽しめる。今日だってそう。外を眺めながら、ああでもこうでもないって言い合ってるだけで充分楽しかった」
「ああ。でも、今度はきっとどこかで降りよう。実を言うと、一度、スカイツリーに上って見たかったんだ」
「うん、きっと」
ハルがうなずく。電車は池袋駅に着こうとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます