第2話 登校

JR中央線の朝はあまりにも混む。何よりこれからどんどん暑くなっていく6月中旬の頃だ。人の熱気もあり立っているだけで汗を浅くかいていた。朝のJRの人数なんて昭和の集団就職ばりにいる。しかし9割会社員で学生もちらほらといるのが辛いところでもある。東中野辺りを通ると直ぐそこに新宿にビル群が見え、高くそして今にも動き出しそうな迫力がある。新宿に近づいて来ると列車の中の雰囲気が引き締まり、ソワソワし出す。ドアが息を吐く音を出した。新宿駅のホームは何処を見ても戦争の様な混乱だ。高校2年になり1年間こんな感じなのだがいつまでたってもなれる気はしない。人混みに流されながらやっとの事で山手線に乗り換えられた。ここもまた今にも電車が破裂しそうな人の人数だ。しかし嫌だとは感じない。一人一人がこれから自分の生活をしようとしている。大袈裟に言うのなら東京が動い出したのを実感できるからだ。そしてそこに自分も加わっていることに感動すら覚える。

高田馬場辺りまで来ると逆に学生を多く見る様にある。俺は狭い車内の中でイヤホンを出しスマホからOlmosの"Ooo La La"を流した。(歌詞はよく知らない)遠くに新宿のビルの群れが見える。背の高いビルは朝日を反射させてビル群自体を一つの光る物体に見せた。しかしこの混み具合、ちゃんと降りれるか心配になってきた。俺は他に同じ境遇にあるやつがいないか辺りを見回した。すると目の前の椅子で本を読んでいた女性がそうだった。が、何故か違和感を感じる。ズボンはグレーに少し白がかった柄的に俺と同じ高校だ。座っているため顔は見えないが本を読んでいる手は長く綺麗だ。背筋が伸びていて細め眼鏡は知的なイメージだ。多分女子だとは思うのだが観察すればするほど違和感を感じた。ズボンを履いているという事は制服は男子なのだ。髪の毛も男しては長い。(男でも目を覆うぐらいの長さの人はいるだろうが)よく見ると背中の下ぐらいまではあった。足が長く感じるために立ったら俺よりデカイような気がした。社会人か…大学生か…?とにかく高校生には思えない。しかも女子だとしたら普通はスカートだろう。(校則では女子はスカートを履けとは書かれて無いものの見たことが無い)本をめくる手は動かず、今にも落としそうだ。

その時車内に"大蔵橋駅"のアナウンスで急に体が反応し自分で驚いてしまった。やばい降りなくては。結構な人が降りるため流されるように出されるがたまに降りる前にドアが閉まる悲劇が起こる。人の壁を縫いながら無事ホームに出ることが出来た。ドアが閉まり次の駅に行ってしまう列車を横目に俺はさっきの女子?を思い出した。今はその姿が見当たらないのでまだあの中だろう。しかしどっかで見た気がするのだが、考えているうちにその事すら忘れてしまうだろう。


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