第2回 理想の上司!?清盛さん(十訓抄)

 前回は『源氏物語』についてお話ししました。

 今回は、源氏と来たら平家! ということで、たいらの清盛きよもりについて、ちょっとお話します。(※光源氏の「源氏」と義経とかの「源氏」とは全然関係ないんですけどね)

 ちなみに、今年、2018年は、平清盛生誕900年だそうです。

 今の元号は「平成」ですが、実は、平治の乱でお馴染みの「平治」以降、「平」の字が使われることはなかったのです。というのも、平家の「平」はよろしくない、という理由で意図的に避けられていた、という話があるそうで。(もちろん諸説あり、ですが)

 そんな平家滅亡以来の「平」がつく元号である「平成」のラストイヤー(まるっと一年が平成的な意味で)が、平家で一番有名な平清盛の生誕900年って、なんだか運命的な感じがしませんか。

 私は平家が好きなので、なんだか感慨深いです。


 ところで、「平家」に、みなさんはどんなイメージがありますか?

 なんとなく、ですが、「正義」の源氏と「悪」の平家ってイメージがあったりしませんか?

 実際、源氏方の源義経さんや那須なすのいちさんは人気もありますしね。一方、清盛は、悪の親玉みたいなイメージというか。

「平家にあらずんば人にあらず」という言葉も有名ですし、あまりいい印象はないかもしれません。(ちなみにこの言葉を言ったのは清盛ではなく、たいらの時忠ときただという、清盛の奥さんの弟でした)

 『平家物語』でも、清盛は結構、横柄おうへいな感じに描かれており、悪役として活躍しています。たまに人間臭いところも見せるのですが、それはまた別の機会にでも。


 今日紹介するのは、『じっきんしょう』という説話集から、清盛の性格について書かれた説話を紹介します。

『十訓抄』というのは、鎌倉時代に成立した説話集で、十個の教訓に合わせた説話が、たくさん紹介されている本です。結構面白い話がたくさんあるので、この本からもまたいろいろ紹介したいと思っています。


 この本に書かれていることによると、清盛は、すごく気遣いができる人だったそうです。

 例えば、ちょっと空気が読めなくて、場の雰囲気をしらけさせてしまった人がいるとき。まあ、ウケ狙いで言ったことが滑ったり、ちょっと失礼だったり、そんなイメージです。

 そんなとき清盛は、「きっとこの人は、悪気はなかったんだ。軽い気持ちで言っただけのことだ」と思って、その人がどんなつまらないことを言っても笑ってあげたそうです。

 また、どんな失敗をしても、たとえ物を壊してしまっても、決してガチで怒ることはなかったそうです。

 やさしいですよね。一人でも笑ってくれたら、場の雰囲気もしらけ切らないし、失敗しても怒らないっていうのも、ポイント高いです。


 また、冬の寒い折、自分のところに仕えている侍たちを、清盛の部屋で一緒に寝かせてあげたとか(清盛の部屋は暖かったのでしょうか)。

 そして朝早くに清盛が先に起きても、侍たちが寝ていたら、彼らを起こさないよう抜き足差し足でそっと自分の部屋を出て、彼らはそのまま寝かせておいてあげたそうです。

 冬は布団から出たくないですもんね。めちゃくちゃありがたい気遣いですよね。


 そして、清盛のところで雇っている人の中には身分の低い人たちもいたそうなのですが、その人の関係者(親戚や友人など)が見ているところでは、一人前に扱ってあげたので、その人たちの面目が保たれて、すごく喜んでいたということです。

 今でいうと、新入社員やアルバイトの家族や友人の前で、社長が直々に褒めてあげる感覚ですかね。

 家族は身内が認められていると思って安心するし、友人からは一目置かれるし、すごくうれしかったでしょうね。


 このように、情が深い人だったので、なんだかんだで、人気があり、尊敬されていたそうです。『十訓抄』では、人の心をつかむ人のお手本として紹介されています。


 いかがですか。清盛のイメージ、ちょっと変わりましたか?

 鎌倉時代にこのようなエピソードが発せられる、ということは、源氏の世になってからも、平家のことを惜しんでくれている人がいたということじゃないかなあと思います。平家は他の人も、魅力的な人がいるので、また後々紹介したいと思います。

 そして、清盛のこういう心遣いは、現代にも通じるものがありますよね。

 自分が空気を悪くしたときに、ちょっと助け舟を出してくれたり、

 失敗してもむやみに怒らなかったり。

 冬の寒い朝には、ちょっと寝かせてくれたり。

 まだまだ半人前の社会人のときでも、身内がいる前では、一人前として扱ってくれたり。

 そんな上司がいたら「ついていきます!」って気分になりそうです。

 また、自分もそういう気遣いができたらいいなあ、なんて思います。


 今回は以上です。読んでいただき、ありがとうございました。

 よければコメントなどお気軽にどうぞ。

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