第2話 太陽にも海にも近い17分

逃げることも

逃げないことも

返すことも

返さないことも


「行くの?行かないの?」

「…◯◯◯。」


蒼い空に近づく。


「あなたはなぜ、ここに来たの?」

「誰かに言われて来たの?」


「僕は来たかったから、ここに来た。今なら、来ることができると思ったから。」


「あなたは何を決めて来たの?この扉を開けるのも、開けないのも自由。壊してもいいのよ。」

「それをあなたが決めたのなら。」

「これからあなたはどこへ行くの。」

赤い色。緑色。黒い色。「君は決めることができるし、決めないこともできる。」

「決めることを決めること。決めないことを決めること。ここまで来たなら17分の猶予があります。」

「この時間で決めることができます。」


そこは海にも空にも近い所だった。


結局僕は、空が向き合ってくれる時間に決めることはできなかった。

17分の間のうち、6分を懺悔に費やした。

残りの8分を、考える時間に使った。はじめの3分はその場所があることの意味の説明の時だった。


影もなく、青い空が次の機会があることを教えてくれた。

「決めたくなったらここに来ることができる」


手帳の数字に丸を書くこと。

重い足を引きずって歩いて何の処理をするか。

空に近づくには、できるだけ雲のない日が良い。

太陽にもできるだけ近づくと良い。太陽はそれを疎ましく思うほど小さな存在ではないのだから、

太々しく、利用してやれば良いのだ。

青い空は太陽の遣いの複代理人。

風も通さぬ部屋で与えられた時間に、

決めに来るのが良いと思った。


「行くの?行かないの?」

「行く。」

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