第4話 冴えない私と、友達パワー
「おはよう、マリー」
朝目覚めると、プリムムさんが腕立て伏せをしていました。二頭身の体で、良くもここまで起用にできるものだなぁと感心しつつ、ベッドから起き上がります。
昨晩私は初めての友達にウキウキしながらベッドに入り、さぁ朝まで語らいますよと意気込んだはいいものの、物の数分で寝てしまったのでした。もっと夜更かしの出来る体になりたいものです。
『おはよう、プリムムさん」
深々と礼をして軽くあくびをし、料理作りに取り掛かります。
作るのは勿論オムレツです。お友達が美味しい美味しいと食べてくれたものは、永続的に作る必要があるとどこかで聞いた気がします。全て寸分たがわず、昨日と味も何もかも同じオムレツが出来が上がりました。
「朝ご飯です!どうぞ召し上がれ!」
「・・・もしかしてマリーは、同じものしか作れない人間なのか?いやもしかすると、人間は全員これしか食えない感じの生命体なのか?」
「いえいえ!ただ、昨日美味しいといってくれたので、毎食作ってあげようと思った次第で」
「マリーってあれだな、極端な人間なんだな!」
怒られちゃいましたかね?まぁ、仕方ないです。今度からは多彩なマリーさんをプリムムさんに見せなければ・・・友達付き合いって難しいですね。
「とりあえず食おうぜ!旨いことには変わりないからな!」
「ええ!天にまします以下省略!いただきます!」
「やっぱ信心深さは皆無だよな・・・まぁそっちのがいいんだけどさ。いただきまーす」
プリムムさんと食べるご飯は、昨日に引き続きずっと格別な気がします。このか区別がずっと続くのであれば、私はプリムムさんとずっと一緒にいたいと思います。それこそ生活の全てを投げ売ってでも!
「・・・なぁ、なんかすっごく
「いえいえ!ずっとこんな時間が続けがいいのにと考えていたところです!」
どうやら顔がにやけていたようです。少しだけ反省ですね。
さて今日は学校で・・・あー、丁度私の得意教科である魔薬学がありますね!プリムムさんにいいところを見せれます!では張り切って
「マリー、お前もしかして、いじめられているのか?」
「へ?」
プリムムさんが、難しそうな顔をしながら私を・・・正確には、私の教科書を見ていますね。まぁ、ズタボロに切り刻まれていたり、落書きをされていますけど、それだけです。私はこうして五体満足で生きてます。ご飯も食べられますし、勉学にだって励むことが出来ます。ならば私は、それだけで幸せになれるのです。
「まぁ、そういうこともあるかもしれないですね。しかし!問題はひとつも」
「マリーは、それで平気なのか?」
プリムムさんの悲しい顔に、心がチクリと痛みます。でも、
「プリムムさん。どうか悲しまないでください。私をいじめている人は、きっと私を虐げることで苦しいことや悲しいことから一時的に目を背けることが出来るのです。何もできない私がそのお役に立てるのなら、それで良いのではないでしょうか?だから、全然気にしないでいいのですよ!」
これが私の矜持です。私の犠牲で幸せになれる人がいるのなら、それだけで私は幸せなのです。それに、私よりも酷い環境で、酷い目にあっている人も、この世の中にはたくさんいます。その人に比べれば、私はまだまだ幸運の中にいるのです。なら、この幸運を誰かにおすそ分けしなければいけませんよね?
「そうか、それがマリーの考えなのか・・・なら一つだけ覚えておいてほしいんだけどさ、俺はマリーがいじめられると悲しくなるぞ」
プリムムさんのその言葉に、少しだけ笑顔が崩れそうになりました。そこを見計らったのか、プリムムさんは畳みかけるように言葉を浴びせてきます。
「だってそうだろう?友達がいじめられているのなら、それを助けたいと思うのが友達だ。いじめてくる奴を、全く同じ方法で懲らしめたくなるのが友達だ。本当は嫌なことなのに、大丈夫って自分に言い聞かせているのを、それは違う、君は大丈夫じゃないって、教えてあげるのが友達なんだ。理由は簡単。俺はそれを見ていて嫌な気分になるからだ。友達といじめてくる人だったら、友達の言うことを聞いてほしいって俺は思うぞ」
優しい言葉の洪水は、私がいままで受けてきたどんな仕打ちよりも心に刺さりました。それのせいでしょうか、刺さったところから、今まで大丈夫だと思っていたものが、全て私に濁流となって襲ってきます。
ボロボロになった私の机や教科書、
捨てられてしまった髪飾り、
燃やされてしまった人形、
周りからの嘲笑、
怖い顔、
痛み、
それが全部、
全部、
私に
「
届くより前に、濁流は消え失せてしまいました。でも、動機が収まりません。凄くハカハカします。
「・・・そうか、そんなに、そんなにも酷いことを、心が壊れかけていたぞマリー。すまない・・・」
机の上を見ると、今にも泣きそうな顔でフォークを首に刺そうとしているプリムムさんが
「ダメです!!」
慌ててフォークを取り上げます。私の為に死ぬなんて、それこそ間違った行いです。
「何故だ!間接的にとはいえ、許されないくらい酷いことをしたんだぞ!命を掛けてマリーの過去を改変するしかないだろう!」
「その判断がそもそも間違いです!私は過去が変わっても、プリムムさんと一緒にいたいんですもの!初めてのお友達が目の前で死にそうになるのを見て、止めないわけないじゃないですか!」
「確かに!」
納得してくれたようで何よりです。
「ならば俺はこれより一日、君を警護する。何かされるよりも前に、勝手に守るぶんには問題ないだろ?」
「まぁ、うーん、どうなんでしょう。問題はない、のですかねぇ」
というか、プリムムさんは一体何を問題だと認識しているんですかね?
「決まりだな!それじゃあ、俺は警戒に当たる!マリーは安心して学校に行ってくれ!」
そう言ってプリムムさんは、私のカバンの中にするりと入っていきました。これならちゃんと私の授業姿も見てくれるでしょう!ではいざ学校へ!
結論から言いますと、プリムムさんのおかげなのでしょう。私をいじめる人、というより私に近づく人がゼロになりました。ついでに、魔法も飛んできません。正確にいうと飛んできてはいるのですが、私に近づくと消滅するのです。いじめっ子たちも気味悪がって近づいてこなくなりました。
それに机や教科書も、どんなに落書きされても、どんなに原型をとどめないほどボロボロにされても、私が近づくと新品同然にきれいになります。見てみぬふりをしていた先生も、目を丸くしていたのが印象的でした。
それがとにかく愉快で、痛快で、少し心が温かくなった気がしました。なんででしょう、今まで温かい心だと思っていたものが、急に冷たく感じるような、そんな気がしたのです。
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