第5話 冴えない私と、妖精裁判 前編
「どうだマリー!俺の力はすごいだろう!」
「はい!プリムムさん凄いです!」
放課後の帰り道、私は且つて無いほどの充足感に包まれていました。大抵服が濡れているか汚れていましたし、心がすうすうしていたので、それがないだけでこんなに晴れやかな気持ちになるとは思いませんでした。
「そうだろうそうだろう!ハハハ!」
晴れ晴れと私の横で浮遊しながら笑うプリムムさん。その後ろに、同じ大きさの女の子が、人を数人食べていそうな顔で浮いていました。背中にしょっている虫眼鏡が印象的ですね。
「ハハハ、じゃあないでしょぉ!!」
「パップン!?」
高速のビンタが、プリムムさんを襲います。空中で錐もみ回転しながら横にスライドして、私のほっぺにあたって止まりました。
「何者だ!っと、ヴィーレか・・・」
「アンタ人と一緒にいるとか正気?しかも率先して力まで使って・・・馬鹿じゃないの!?」
どうやらお知り合いだったようですね。一瞬危ない何かかと身構えてしまいましたけど、その心配は不要なようです。
「あー、ウィーレ、1回あの子を”見て”みな。それで分かると思う」
「えぇ・・・まぁ?近くには神父共もいないからいいけど・・・」
ウィーレさんはあたりをきょろきょろと見まわしてから、少しだけ光り、凄く驚いたような顔をしました。
「・・・え?ちょっと待って。今度はもっとちゃんと・・・
今度は虫眼鏡を顔に持ってきて、更に強く光ったウィーレさんは、口を両手で押さえてから、私の右肩にひしっと抱き着き
「あなた、大変だったのね・・・こんな、こんな・・・」
号泣しながら虫眼鏡を振り上げて
「待ってください!何しようとしてるんですか!」
地面に落とそうとしたので、慌てて虫眼鏡を取り上げます。
「だってこんな運命を見ちゃったら、命を賭けて改変するに決まっているじゃない!!」
涙をダーっと流しながら訴えてくるウィーレさん。なんでこう、妖精さんは命を賭けて私に尽くそうとするんですか。そしてこれからの私に一体何が待ち受けているというんですか・・・
「・・・わかった。これはもう、妖精裁判案件ね」
「やっぱりヴィーレもその結論にたどり着いたか」
「正直裁判をする時間も惜しいくらいだけど、伝統は守らなきゃいけないもの」
「マリーは俺ら全員で守らなきゃいけない存在だからな・・・ついでに俺らも救ってもらおう」
神妙な顔でお話し始めたお二人。早速私の人生最大の山場を迎えそうです。
「えっと、一体何が何だか」
「マリー、よく聞いてね。これから私たちの妖精世界に招待するわ。向こうについたら、何があっても正直に本当のことだけを答えるのよ」
どうやら私の意見やら拒否権やらは一切合切切り捨てられるようです。でもよくよく考えてみてみると、そもそも断る理由もないので行ってみることにします。
「わかりました!じゃあ、行きましょう!」
きっと裁判といっても、そんなにそんなにガッチガチのものじゃないと思うんですよね。妖精ですし、こう、ファンシーな感じで終わると思うんですよ。
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