5大みそか~掃除をしなくてはいけません~
クリスマスの苦い経験から、飯島蓮人は、大みそかや正月こそは絶対に楽しもうと張り切っていた。補習も無事に終わり、本当の冬休みがやっときたと思っていた。
そして、今日は大みそかの前日、12月30日。飯島蓮人は、大みそかや正月の記憶を思い出していた。
大みそかの記憶といえば、夜中にヒロインたちと一緒に初詣に出かけた記憶が残っている。4人のヒロインたちは、思い思いの着物を着て、一緒に神社にお参りに行ったものだ。着物姿の女性は露出は少ないが、かなり目の保養だったなあと前世を思い出し、飯島蓮人はにやりと一人自分の部屋で笑っていた。
「トントン。」
ドアをノックされて、我に返る。
「お兄ちゃん。お母さんが呼んでる。」
飯島蓮人の部屋のドアを開けて、顔を出したのは妹だった。
「母さんが何の用事だろうか。」
怒らせると面倒なので、仕方なく二階の自分の部屋から、一階の母親がいるだろうリビングに向かう。妹もついてきたのだが、なぜか両手にモップと雑巾を持っていた。さらには、エプロンをつけていた。
「わざわざ呼びだして何の用事だよ。」
「何を言っているの。年末といったら、大掃除でしょう。あんたも一緒に家を掃除するのよ。当たり前でしょう。」
母親も妹と同じ格好をしていた。エプロンをつけ、部屋の窓を拭いていた。
「めんどくせえ。」
「お兄ちゃんもやるんだよ。掃除したら運が向いて、女子にもてるようになるかもしれないよ。まあ、お兄ちゃんの場合、何をしても無駄だと思うけど。」
「なるほど。掃除男子ももてる要素の一つではあるな。仕方ない。手伝ってやろう。」
『はあ。』
女子にもてると聞き、がぜん掃除にやる気を出した飯島蓮人に、妹と母親は深いため息をついた。飯島蓮人の扱いに慣れている家族だった。
飯島蓮人は前世を思い出す。前世で掃除をした記憶がなかった。学校では、大抵は掃除当番をさぼっていた。掃除など、真面目な生徒がやるものであり、自分は真面目ではないと思っていた飯島蓮人にとって、やるに値しないものだった。
年末の大掃除も同じで、家族はやっていたような気がするが、自分はノータッチだった記憶しかなかった。飯島蓮人は4人のヒロインたちと遊ぶのに忙しかった。
「ああでも、あれはエロかったなあ。」
掃除で思い出すのは、女子の雑巾がけの姿。学校の廊下を雑巾がけしている姿を、長期休みの前によく見かけた。床にワックスをかけていて、それを磨くために床を雑巾で拭いていたのだろう。男子生徒の目の保養だった。
女子のお尻を見放題で、さらには、雑巾がけしているときにちらりと覗く腹がたまらなくエロかった。大抵の女子は体操服だったが、それでも長ズボンということはなかったので、足は拝みたい放題だった。そして、制服のまま掃除に励む生徒もいて、そういう生徒の下着を盗み見るのもひそかな楽しみだった。
「ということは、妹で見られるのではないか。」
急いで妹が掃除している場所まで近づいた。ちょうど妹は床の雑巾がけをしていた。これは素晴らしい。一気にテンションが上がった飯島蓮人だったが、すぐに急降下した。
想像していた雑巾がけとは異なり、何も目の保養になりはしなかった。
そもそも、エプロンをしているせいで、腹が見えるということがない。それに、廊下を走って拭いているのではなく、膝をついて、床を磨いている。お尻が見えそうな短パンでもないので、生足は拝めないし、タンクトップでもないので、ブラちらなどもあり得ない。
「何見てるの。キモい。自分の部屋でもきれいにしたらどうなの。」
じっと見ている視線に気づいた妹が、さげすんだ目で見てくるので、仕方なく、飯島蓮人は自分の部屋の掃除をすることにした。
掃除なんて面倒なだけだと思った飯島蓮人だった。
それでも、きれいになった家を見て、少しは気分がよくなり、掃除もたまにはするものだと思うのだった。
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