13進路相談②~文系と理系の違い~

「まず、理系だけど、数学と理科の授業数が増えるということ。高校の数学にはI~Ⅲ、A~Cまであるんだけど……。」


 懇切丁寧に説明してくれたのはクラスの女子だった。有り難く説明を聞くことにする。


 説明を要約すると、高校の数学は、文系は数学I~Ⅱ、A~Bまでを受けるが、理系はその後のⅢとCまでを履修しなければならないそうだ。


 理科については、文系は一つの分野でいいが、理系に入ると、二つの分野を履修しなければならない。生物、化学、物理、地学などから選ぶようだ。


 ふむふむ、真剣に話を聞いている飯島蓮人に、クラスメイトはあきれている。そもそも、そんなことは夏休みの三者面談で話されることでもある。さらには、朝、帰りのHRはもちろん、授業中にもちらほら話されていることでもあるのだ。


 それを今更真剣に聞こうとするのは、おそらく飯島蓮人くらいだろう。とはいえ、まだ文理選択を完全に決定しているわけではない。今ならまだ遅くはない。



「選択といえば、社会に選択があるわね。これは文系も理系もだけど、日本史と世界史のどちらかを選ぶことになっているわ。」


「じゃあ、理系の方が、授業数が多くなるということか。」


「そんなわけないでしょう。理系は数学と理科の授業が多くなる代わりに社会とか国語が減る。文系は逆に社会と国語が増えるわ。だから、結局、授業数は変わらない。」



 話を聞き終えた飯島蓮人は決心した。女子が少ないと言われている理系には絶対進まないと。数学も理科も壊滅的に成績が悪いので、理系に進むメリットが感じられないと思ったからだ。


 将来、女子からもてるというメリットもあるのだが、別に今のままでも俺は十分に魅力的な男である。これ以上もて要素は必要ないと思うことにした。


 何度、現実が自分の前世と違って絶望しても、へこたれない不屈の精神を持った男であった。ただ単にバカな男、飯島蓮人としてクラスは認識していたが。




 だからといって、文系に進んだ理由は、大したことはなかった。女子が多いということ、理系の科目より、多少は文系の国語や社会がほんの少しだけよかっただけ。それ以外に大学の進みたい学部が文系にあるというわけではないし、将来の職業に文系が役立ちそうという理由でもなかった。




「まあ、飯島君みたいなちゃらんぽらんは文系の方がいいのかもしれないね。そもそも、大学に入れるかもわからないから。せいぜい、今から勉強を頑張ることね。」


「そうそう、理系のクラスも男子が多いけど、理系の大学に進んでも同じだから。理系の大学の方が更に女子が少ないから、進まないにしても覚えておいた方がいいかもしれないね。」



 男子と同じように成績のことを言って、さらにはご丁寧に、理系の大学の男女比についても親切な彼女は教えてくれた。彼女は弁当を食べ終わると、そのまま、机から参考書を出して、勉強を始めてしまった。



 飯島蓮人は前世を思い出す。前世では、文系、理系のクラス分けはなかった。とはいえ、さすがに学力の差を考慮して、特進クラスなるものが存在していた。飯島蓮人は前世での成績は普通より少し下くらいであった。


 ヒロイン4人とも、飯島蓮人より頭がよかったはずだが、頭の悪いことに対して、誰も何も言っていなかった。バカな子ほどかわいいということは言っていたが、頭の出来に対して悪く言うことはなかったのだ。



 それにしても、理系や文系で授業内容が変わるのは初耳だった。前世では特進クラスの生徒のみに授業が多く課せられていて、その他のクラスは普通の時間割だった。


 普通クラスの中にも大学に進学する生徒はいたので、そんなことを気にすることもなかった。この世界は進路に対して、面倒くさい。


 冬休みは目前に迫っているのに、進路相談を考えて気分が下がっていく飯島蓮人だった。

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