12進路相談①~理系の方が女子からもてるのは本当ですか~

 女子の制服に絶望しながらも12月に入り、飯島蓮人は浮かれていた。12月といえば、クリスマスである。


 クリスマスといえば、女子のミニスカサンタのコスプレだ。これは、飯島蓮人の中のクリスマスの決定事項であった。真っ赤なサンタの服装をした女子はさぞかし目の保養である。飯島蓮人はそれを見るだけで幸せだった。



 クリスマスが来るということは、冬休みも来るということだ。二学期も大して面白いこともなく、絶望ばかりを経験した飯島蓮人にとって、早く12月の終わりが来ないかと待ち遠しくなっていたのは当然のことだろう。


 ただし、休み前には必ず担任と親との三者面談があるらしい。冬休み前の12月の半ばにも、担任と自分と親の三者面談が行われることになっていた。




「こんなの悩む余地なく、文系に決まっているけどな。」


 昼休みに教室で弁当を食べながら話しているのは、いつものクラスメイトの男子である。


「俺は理系かな。大学は工学部に行きたいし。」


「僕も理系かな。数学とか理科とか結構好きだし。」


 口々に返事をする男子に飯島蓮人は反論する。


「お前ら、女子が少なくて平気なのかよ。お前らが行きたがっている理系は女子が少ないんだぞ。高校生の貴重な二年間を、女子がほとんどいない、むさくるしい教室で過ごすことに抵抗はないのかよ。」



「そうは言っても、俺はすでに彼女がいるし。」


「僕も別に女子の数で決めているわけではないし。それに、将来的には理系の方が女子にもてるかもしれないよ。」


 「女子にもてる」という言葉に反応した飯島蓮人は、今までの言葉が嘘のように詳しくきこうと男子に詰め寄った。


「どういうことだ。詳しく教えてくれよ。」


「別に普通のことだよ。理系の方が、頭がいいイメージがあるかもというだけで……。」




 話を聞く限り、どうやら理系の方が将来的にもてる確率が上がるということらしい。理由としては、工学部に入ることで、大手自動車メーカーや電機メーカーに勤めることができるとか、医学部に入るということで、将来は医者になれると女子は思っているそうだ。他にもIT大手やシステムエンジニアなど、理系の方がかっこいいというイメージが強い。




「理系の方が、将来、金持ちのエリートなれる可能性が高い。」


女子からの最大のもてポイントは金らしい。世の中、金がすべてとなよく言ったのものだ。




「といっても、飯島の成績じゃあ、大手の会社も医者も、それ以前に大学進学も危ういからな。文系でも理系でもそう変わらないかもな。」


 


 男子の言葉はすでに飯島蓮人の耳には入らなかった。女子からもてるということが、飯島蓮人にとっての最優先事項であったからだ。


 しかし、そこでふと疑問が頭をよぎる。そして、そのままその疑問を男子にぶつけることにした。


「今思ったんだが、どうして、文系と理系なんかのクラス分けをするんだ。それをするから男子が多いクラスと女子が多いクラスができるんじゃないか。分ける必要があるのかよ。」


 


 その質問に男子は深いため息をつく。彼らの会話を聞いていた他のクラスメイトも同じようにため息をこぼす生徒もいた。どこかで見た光景である。もはや、一度ではなく、何度も見た光景である。


 俺はまた何か変なことを口走ったのだろうか。そう思いつつも、変なことを言った覚えがない。飯島蓮人は相手が答えるのをじっと待つことにした。



「いや、どう考えても分けなきゃいけないに決まっている。理系の学部の工学部や医学部に必要な教科と、文系の法律学部や経済学部が必要な教科は違うだろう。」


「もしかして、また例の病気がでたってか。確かに漫画やアニメ、ラノベでは、頭のいいも悪いも同じ学校で、クラスにも区別がないからな。それに理系も文系もない物語が多いからな。でもまさかそれをうのみにしている奴がいるとは。」


「うけるんですけど。よくうちの高校に受かったものだよね。まあ、だからこそ落ちこぼれ確定というわけか。」


 いつものごとく、ぼろくそいわれる飯島蓮人だった。


「何が違うっていうんだよ。」


 こうなればもうやけくそだ。とりあえずは違いを知る必要があると感じた飯島蓮人だった。

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