11衣替えの季節~冬服の絶望、タイツは極厚で透けるということはありません~

 制服の衣替えが10月に行われた。ただえさえ色気がなかった女子の夏服から、また露出の低い冬服に戻ることになる。


 飯島蓮人はあきらめていた。すでに入学式の時に冬服は確認済みである。それでも、飯島蓮人はかすかな希望を抱いていた。


 冬といえば、黒タイツである。前世では冬に女子が制服のスカートの下に黒タイツを履いていたことを思い出した。


 タイツから透ける足は最高に目の保養だった。カナやモモカがよく冬場に履いていた。それがもしかしたらこの冬に見られるということだ。


 

 中学の時は、タイツは禁止で、冬でもスカートに靴下だった。ただし、スカートは長く、スカートの下に学校指定のハーフパンツをはいている生徒がほとんどで、高校よりも色気もあったものではなかった。


 だからこそ、制服自体に楽しみがない中での黒タイツの存在。これで冬は楽しく過ごせそうと思っていたのだが、飯島蓮人の期待は裏切られることになった。いつものように。



「タイツは履いているが、これはありえないだろ……。」


 朝、学校に来て、飯島蓮人はつぶやいた。12月に入り、徐々に寒い日が増えてきたある日のことである。最初に黒いタイツを履きだした女子生徒から、クラス内ではスカートの下に黒タイツを履いている生徒が目立つようになってきた。


 それを観察しているうちにとうとう、このようなつぶやきが出てしまったのだ。飯島蓮人が予想していたタイツとは大きく異なっていた.



 まず、タイツだというのに、全く透けていないのだ。いったいどれだけの厚さがあるのだろうか。スカートの下から見えるのは真っ黒い足のみで、全くといっていいほど足が透けて見えないのである。


 これは由々しき事態だと感じた飯島蓮人は、クラスの男子にこの現状を訴えることにした。さすがに女子に面と向かって、タイツのことを聞くのは飯島蓮人でも抵抗があったようだ。


「女子のタイツはどうして透けていないんだ。透けていないタイツなんておかしいだろう。」


「いや、どれだけ女子のタイツを見てるんだよ。仕方ないだろう。女子だって、足が冷えるから、厚めのタイツだって履きたくなるんだよ、きっと。」


「まあ、確かに飯島の意見もわかるが、現実は厳しいものだ。俺たちだって冬場はズボンでも寒いのに、ましてや女子なんてスカートなんだから寒いに決まってる。タイツくらい厚くても我慢するしかないさ。」


 返事をした男子はそろいもそろって、女子の味方であった。どうしたことだろう。いったい、この世界の男子はどうやって楽しみを見出しているのだろうか。


 本気でこの世界の男子の心配をしだす飯島蓮人だった。



 タイツ以外にもいくつかの絶望があった。まず、カーディガンの存在だ。前世では色とりどりの色のカーディガンを着た生徒がいた。大きめのカーディガンを着て、萌え袖をしていた女子もいて、カーディガンも一種の目の保養アイテムだった。


 しかし、この世界ではそうではないようだ。色は紺か黒の指定となっていた。さらにはカーディガン姿で授業を受けてはいけないらしい。必ず、カーディガンの上にはブレザーを羽織ることが校則で決められていた。


 ブレザーはもちろん、前ボタンを留めることは必須であるので、暑苦しいことこの上ない。


 早く冬が終わってほしい、飯島蓮人はそう思わずにはいられなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る