7文化祭②~空き教室を訪れたのはヒロイン4人目ですが……~
気持ちよく睡眠をむさぼっていた飯島蓮人だったが、突然、ガンっという机を蹴り飛ばす音に驚いて目を覚ました。何事かと思い、慌てて教室内を見回すと、そこには怒った顔をした六ツ美佳純の姿があった。
「やっと見つけた。おまえ、今までここで休んでたのかよ。受付の仕事、さぼりやがったな。」
目が合うなり話しかけてきた六ッ美佳純の言葉に、飯島蓮人は一瞬、何のことかわからずに頭にはてなマークをつけて言葉の意味を考えていた。
その態度が気に入らなかったのだろう。
「やっぱり、お前はユウトなんだな。馬鹿そうなところがそっくりだ。華江から聞いた通りだ。俺もこんな奴が好きだったと思うと、死にたくなるぜ。」
その言葉を聞いて、ようやく飯島蓮人の頭が働きだす。
「ええと、受け付けって確か、うちのクラスの出し物のバルーンアートの受付だろう。あれってクラス全員がやる必要はなかったはずだよな。」
まずは、六ツ美佳純が初めに怒っていたことへの弁解をする。そして、飯島蓮人は気になったことを追求する。
「ユウトとそっくりって言ったよな。それって、お前は本当に……。」
「それ以上言うな。」
いきなり大声をあげられたので、飯島蓮人の言葉はその声にかき消された。
「それ以上は何も言うな。俺もおかしいなとは思っていたんだ。転校初日にお前と目があった瞬間にどこかで会ったことがあるだろうという既視感に襲われた。それからだった、夢にお前と九条華江、隣のクラスの七瀬梨花が出てきた。あと、どこのだれかもわからないが、もう一人の女子生徒も出てきた。」
ここで、話を止めた六ッ美佳純は、再度飯島蓮人をにらんできた。
「不審に思った俺は、席替えで後ろの席になった九条華江に相談した。お前と因縁がありそうな感じだったからな、相談した俺はそこで、華江と同じ立場だということがわかった。」
「それって、前世を思い出したということか。」
六ツ美佳純の話が本当だとしたら、これで前世でのヒロイン4人がすべて飯島蓮人の周りにそろったということである。その事実に興奮してつい声を荒げてしまった。
「それならお前は俺のことが好きということか。そうだよな。お前だけはおれのことが好きだと言ってくれ。」
思わず、六ツ美佳純の方に近寄って肩をつかもうとすると、すぐに避けられてしまった。
「俺以外のヒロインとはすでにあっているのだろう。俺も彼女たちと一緒だ。せっかく、新しい世界に転生したんだ。それなのになぜ、またお前を好きにならなくちゃいけないんだ。」
「それはいったい……。」
「お前を好きになることはないということだ。むしろ、嫌いだな。金輪際、俺に話しかけるな。」
結局、何をしに来たのかわからないまま、六ツ美佳純は空き教室から出て行ってしまった。
「そういえば、お前は前世でもそんな話し方だったか。男装はしていたが、俺とか言っていなかったよな。」
教室から出ていく間際に話しかけたが、返事はなかった。
またもや、前世のヒロインに嫌いと言われてしまった。これで4人すべてから嫌われていることになった飯島蓮人だった。
そういえばと飯島蓮人は思い出す。記憶に間違いがなければ、六ツ美佳純に確認した通り、受け付けはクラス全員がやらなくてもよかったはずだ。それなのにわざわざ飯島蓮人を探していた。その事実を知るや否や、飯島蓮人は持ち前の前向きさを発揮した。
「嫌いとは言っていたけど、俺にわざわざ話しかけるために、探すくらいには好きということだな。なんだかんだいって、カズサもツンデレだったからな。」
何度言われようと、へこたれない飯島蓮人の不屈の精神が垣間見える瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます