2体育祭の準備~なぜか一緒にマスコット作りをしています~
体育祭の準備を夏休み少し前から始めている。体育祭は9月の終わりに行われることになっていた。夏休み中も補習が終わった後、昼休憩をとって少しずつ進められてきた。
マスコット作りとは、体育祭をビジュアルで楽しませるものだ。各団に配色された色に合わせたイメージキャラクターを作る。
準備は一応、滞りなく進んでいた。マスコット作りになった飯島蓮人もやる気がないながらもクラスのため、団のために働いていた。色に合わせたものを作っていくため、黄色なら虎、青なら竜神などが挙げられる。人の背丈より大きいものを作り上げていく。マスコットは体育祭当日に各団の応援席の後ろに配置されることになっている。
最近は、漫画やアニメのキャラクターを作る団も多いようだ。飯島蓮人の団は赤が割り当てられた。そのため、マスコットに選ばれたのは妖怪アニメで人気の赤い地縛霊の猫である。最近は人気が廃れてきているようだが、なぜかそれに決まってしまった。
夏休みに進めていたおかげで、だいぶ形ができてきていた。
「六ッ美さんは、何かスポーツでもやっていたの。」
「ええと、イギリスで陸上競技を少し。短距離が得意かな。」
なぜか、転校生の六ツ美佳純がマスコット作りに参加していた。今からでは応援団の練習には間に合わないということらしい。さっそく、マスコットを作りながら、佳純にいろいろ話を聞こうと女子が群がっていた。
「道理で、よく日に焼けていて、かっこよく筋肉がついているわけだ。」
同じクラスの女子たちの輪にヒトミ先輩が声をかけた。どうやら、話が盛り上がってはしゃいでいたのが気になったようだ。
「こんにちは。9月に転校してきた六ツ美佳純です。マスコット係になったので、残り少ない準備期間、よろしくお願いします。」
そういって、頭を下げた六ツ美佳純にヒトミ先輩はそんなに大げさにならなくてもいいと諭した。
頭を上げた六ッ美佳純は、ヒトミ先輩の顔を見て固まってしまった。誰か知り合いにでも似ていたのだろうか。それにしては急に顔が青ざめて身体が小刻みに震えている。
「あ、あなたはヒトミ先輩。どうして、こんなところにもしかしてあなたも……。」
「確かに私の名前はヒトミだけど、どうしてあなたが知っているのかしら。私とあなたは初対面のはずだけど。」
六ツ美佳純はその後、急に具合が悪くなったといって、教室から出ていった。ヒトミ先輩は確かに前世の先輩に似ていて、名前も同じである。とはいえ、顔を見ただけで震えだすような怖い先輩ではなかった気がする。
「飯島君といい、さっきの子といい、どうして私の名前を知っているのかしら。」
ヒトミ先輩がどのような人だったか思い出そうとした。しかし、飯島蓮人の前ではヒロイン同様、可愛らしいところしかなかった。もしかしたら、自分の居ないところでは怖かったのかもしれない。
とりあえず、六ツ美佳純に詳しく話を聞こうと思った飯島蓮人だった。
六ツ美佳純がいなくなった教室では、その後もマスコット作りが黙々と進められた。
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