10夏休み終了のお知らせ~8月中に始業式は始まります~
楽しかったとは決して言い難かったが、それでも学校生活よりは楽しめた夏休みが今日で終わりである。
ここで、飯島蓮人は目を疑った。カレンダーを確認していたのだが、明日はまだ8月であり、9月までにはあと数日残っている。それなのになぜか夏休みは終了という事実があった。
どうやら、この高校は進学校という名に恥じぬよう、夏休みを数日早めて勉強時間をより多くしようという学校の方針らしい。そんな方針を知らない飯島蓮人はどうして新学期が9月から始まらないのか、疑問と怒りで頭がいっぱいだった。
前世では、夏休みが終わり、新学期の始業式が始まるのは決まって9月1日だった。9月1日が休日の場合は、翌日の月曜日からの登校だった。それが当たり前だったので、8月の最終週から学校が始まることに文句が言いたくなったのである。
「どうして、うちの高校は8月中に始業式が始まるのか、普通、二学期の始業式は9月からじゃあないのか。」
思わず、クラスメイトの男子に電話をかけてしまった。電話に出た男子に疑問を投げつけると、あっさりと男子は答えをくれた。
「いや、うちの高校は進学校だからな。仕方ないんじゃないのか。それに今時9月から始まる学校は少ないと思うぞ。ただでさえ、ゆとり教育で土日が休日で休みになっているせいで、授業数が少なくなっているだろう。それを埋めるためにも夏休みを削る動きがあるからな。」
「意味わからん。お前はそんなのでいいのか。夏休みが短くなるなんて信じられない。」
「小学校、中学校でも二学期の始業式が始まったのは8月終わりだろう。今更どうしてそんなに怒る必要がある。」
「それとこれとはわけが違う。それに、小学校、中学校は二学期制だった。」
そう、飯島蓮人が通っていた小学校、中学校では二学期制を取り入れていた。そのため、夏休みが短めに設定されていた。その分、秋休みという一学期と二学期を分ける休みが存在していた。一週間くらいの休みが10月半ばに与えられた。
前世を思い出した当初は違和感しかなかったが、夏休みの残りの一週間分が秋休みになったと思えばこそ我慢できたのだ。
高校では、3学期制を取り入れている。ということは、秋休みは存在しないということだ。それなのに夏休みを短く設定する必要はないはずだ。
「まあ、飯島の理屈はわかるけど、もうあきらめた方がいいぞ。何度も言っていると思うが、俺たちが入学した高校はいわゆる進学校と呼ばれる高校だ。大学進学率をいかに良くするかに先生たちは執念を燃やしている。進学率を上げるためだったら、できることは何でもするさ。自分たちの休みが多少減ろうが、生徒たちが嫌といおうがお構いなしだ。」
電話に出た男子は丁寧に説明し、飯島蓮人にあきらめろと告げた。あきらめろと言われても、休みが短くなることに納得できるわけがない。
「そうそう、夏休みが終わるということで、当然、明日が夏休みの宿題の提出日になる。俺とこんな電話していて大丈夫なのか。夏休みに出された宿題は山ほどあったはずだが、終わっているのか。」
突然、嫌な話題をふってきた男子だったが、それは飯島蓮人にとって、今一番聞きたくない話題だった。当然、勉強が嫌いな飯島蓮人が終わっているはずがない。
「終わっているわけがないだろう。そうだ。今からお前の家に行ってもいいか。宿題を……。」
「無理。だって俺も終わっていないから。とはいっても、飯島と違って今日中に終わりそうな量だからな。せいぜい、徹夜して終わる分だけでもやっておくんだな。」
そういって、向こうから電話を切ってしまった。その後にスマホがメッセージを受信した。誰からだと思ったら、先ほど電話していた男子からだった。
「そうそう、言い忘れていたけど、夏休みの宿題が終わらない奴は、放課後居残り決定みたいだぞ。覚悟しておいた方がいいかもな。」
そんな物騒な内容だったので、飯島蓮人は返事をしないことにした。
今の時刻はすでに9時を回ったところである。宿題なんてやってられるかと、早々と手を付ける前からあきらめた飯島蓮人は、ベッドにふて寝することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます