5夏祭りと花火~花火と告白はセットです~
プールでのショックで飯島蓮人は数日家で寝込んでいた。とはいえ、せっかくの夏休みを無駄にするわけにはいかない。
夏休みの定番といえば、プールや海の他に夏祭りがある。浴衣姿の女子と一緒に祭りを楽しむ絶好のイベントである。
うまくいけば、夏祭りの最後に行われる花火の途中で、女子から告白というラッキーイベントがその後に控えている。
実は飯島蓮人はそれを期待していた。
まずはその夏祭りがいつどこで開かれているか調べなければならない。スマホで地元の夏祭りを検索すると、ちょうど運よく一週間後に夏祭りが地元で行われることになっていた。
詳しく調べてみると、祭りの最後には花火も打ち上げられるということだった。これは絶好のチャンスだ。さっそく、女子のだれを誘おうかスマホの連絡先を確認する。
前世では、夏祭りをカナと一緒に訪れた。高校1年の時の出来事だ。幼馴染とはいえ、中学校まではただの親しい幼馴染という関係だった。飯島蓮人にとっては自慢の幼馴染で、ひそかに恋心を抱いていた。カナもまんざらではなかった気がする。
高校も同じになり、周りから付き合っていないのかと聞かれて、頬を赤く染めながらも必死に否定するカナに少なからずショックを受けた飯島蓮人だった。
そんなときに、カナの方から夏祭りに行かないかと誘われた。内心大喜びだった飯島蓮人はすぐに誘いを承諾した。
当日、浴衣を着て、長いストレートの黒髪を結って現れたカナに再度惚れ直した。祭りを一緒に楽しみつつ、祭りの最後の花火が打ち上げられるときに告白されたのだ。
ちょうど、花火の音に紛れて何を言っているのか聞こえなかったが、飯島蓮人はカナの顔が真っ赤で恥ずかしそうにうつむいているのを見て、告白されたのだと気付いたのだった。
「もしかして、俺に告白してくれたのか。」
「そんなこと、確認しなくていいからあ。返事を教えてよ。」
答えはもちろん、イエスだった。こうして、二人は晴れて恋人同士となるはずだったのだが、この告白現場を見ていた他のヒロインたちが二人でいるところに乱入してきて、その後は大変だった。
飯島蓮人がカナの告白には応えたことが、他のヒロインたちの反感を買ってしまったようだ。カナは3人のヒロインたちに連れ去られてしまった。一人取り残された飯島蓮人は呆然としていることしかできなかった。
結局、30分くらい後に4人で戻ってきたが、なぜかカナは涙目になっていた。そして、告白は忘れてほしいと言ってきた。そんなことはできないと言おうとしたが、他の3人の視線が痛すぎて、その場はうなずくしかなかった。
懐かしい記憶に浸りながらも、今回の夏休みはどうだろうかと考える。当然、カナ、今の名前は九条華江を誘える雰囲気ではない。他のヒロインだと思われるリン、七瀬梨花にも嫌われている。電車で出会ったモモカ、今はさくらと呼ばれる彼女を誘おうにも連絡先を知らない。
途方に暮れながら、クラスの女子の連絡先を見ていると、スマホが振動した。メッセージを一件受信していた。
「プールの時は大丈夫だったか。なんだかすごい病んでたみたいだけど。お前が好きそうな夏祭りがあるんだが、一緒に回ってもいいぞ。」
何と、一緒にプールに行ったクラスの男子生徒からだった。またむさくるしい男子と行くことになるのかと思ったが、他に一緒に回ってくれそうなやつはいないので、とりあえず返事を返した。
「別に一緒に行ってやってもいい。」
一緒に行って、祭りの最中にかわいい自分好みの女子を見つけたら、勝手に女子と回れば問題ない。
飯島蓮人のテンションはまた一気に上がり、夏祭りが楽しみで楽しみで仕方なくなった。
返事を見たクラスメイトの男子は、ツンデレかよ、と突っ込みつつも、プールのあの落ち込みから復活したならそれでいいと思うことにした。あの異常な落ち込みようはやばかったので、そのまま引きこもりになってしまったらどうしようかと心配していた、優しいクラスメイトだった。
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