4プールに行きました~目の保養はありません~

 結局、女子を誘うことはできなかったが、男子は誘いに乗ってくれたので、さっそく男子数人と近くにある市民プールに行くことにした。


 男子しかいないが、プールに行きさえすれば女子は必ずいるはずだ。そして、プールといえば何と言っても、女子の水着姿が拝める。


 市民プールに向かう道中のバスで、ずっとにやけた顔をしていた飯島蓮人だった。それを不審そうに見る男子たちにはもちろん、気づいていなかった。


 飯島蓮人は別に今日初めてプールに行くのではなかった。今まで15年生きてきて、何度もプールで遊んだことはあった。しかし、前世の記憶を思い出した後にプールで遊んだことはなかった。


 前世を思い出したのは、中学1年生の時である。その後、何かと忙しくてプールを訪れる暇がなかったのだ。頭が悪かったので、夏休みは補習があり、それ以外の日は部活があった。それをこなしている間に、塾にも行かなければならなかった。


 プールといえば、中学校の体育の授業しかなかった。とはいえ、この世界はどうやら女子の服に対する露出度がどんどん下がっているとしか言えなかった。


 前世では水着はスクール水着であり、紺色の水着に足を通して上に引っ張り肩のところで引っ掛けるタイプだった。足はまたのところまでの長さでそれが通常使用だった。もちろん、胸のところに名前が書かれたワッペンがついていた。


 この世界にもそのようなスクール水着は存在していたが、絶滅寸前のようだった。代わりに上下に別れたセパレートの水着が主流になっているらしい。飯島蓮人の時代はその間くらいの時期であり、古き良きスクール水着とセパレート水着の割合が半々くらいであった。


 女子たちが言うには、あと何年かすれば完全に古き良きスクール水着はなくなるだろうということだった。


 高校でもし、水泳の授業が行われてもあのスクール水着は拝めないとかもしれないということだ。


 

 高校では水泳の授業がなかったことを思い出したが、それはすでにあきらめている。今日が前世の記憶を思い出して初めてのプールということで、飯島蓮人はずっとにやにやしていたのだった。


 プールにたどりついて、さっそく更衣室で水着に着替える。女子でもないので、水着にこだわりはなかったのだが、さすがに中学校で来ていた水着で泳ぐのはダサいと思ったので、新しい水着を適当に見繕って購入したのだった。



 いざ、女子の水着を拝むとしよう。意気込む飯島蓮人を待っていたのは、絶望という悲しみだった。


 先ほど思い出したスクール水着もそうだったが、この世界では女性の服装の露出度が下がってきているようだ。水着を着ていることには来ているが、ほとんどの女性が、水着の上に何やら長袖や半そでのパーカーを着ていたのだった。律儀にもチャックも占めている女性もいた。


 上半身を隠してはいても、下半身がある。そう思って、うら若き女性の下半身を確認するが、それもガードされていた。なんと、短パンを履いている女性が多かったのだ。


 飯島蓮人はプールで女子が着る水着はビキニが当然と思っていた。前世ではそうだったのだから、この世界にもそれは当てはまるといまだに勘違いをしていた。


 4人のヒロインたちは皆、思い思いのビキニの水着を着ていて、胸を強調していた。それはそれは目の保養になった。その状態で飯島蓮人に抱き着いてきたときには天にも昇る気分だった。たまにポロリもあって、プールには本当に楽しかった記憶しかなかったのだ。




「ガーン。」


 頭に巨大な岩が落ちてきたような衝撃を受けた。プールだというのにこの露出度の低さはどうなのだろうか。


「どうして、女子の水着がビキニではないのだろうか。どうしてどうして………。」



「ええと、飯島、お前どうしたんだ。プールに来る前はあんなにテンションが高かったのにいきなり急降下して。もしかして、実は泳げないことを思い出したとかか。」


 ぶつぶつとつぶやく飯島蓮人が心配になった男子が声をかけたが、完全に意気消沈の彼に届くことはなかった。


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