3誰と遊びましょうか~忙しい高校生の実態~

 月が終わり、今日からやっと本来の夏休みが始まった。補習もなく、部活もない、学校から解放されて、一日中自由に過ごすことができる。


 飯島蓮人はこの日を待ちわびていた。学校のことを気にせずに、これから1か月ほど、楽しく過ごすことができる。たくさんの計画を予定していた。


 

 プールに海水浴はもちろん、夏祭りに花火大会も彼の予定に含まれていた。これは、前世での夏休みの定番イベントだったのだ。4人のヒロインたちとイチャイチャしていた。その思い出が忘れられずにいた。


 定番イベント以外にも楽しいことはたくさんあった。前世では、4人で一緒に遊園地に行ったり、泊りがけの旅行に出かけたりもした。それ以外にも、学校の宿題を勉強会と称して彼の家で行った。


 前世での高校3年間の夏休みは最高だった。彼の周りには常に4人のヒロインがいて、目の保養充分だった。夏場で服装も薄手で、きわどいところも見たい放題だった。



 前世での思い出があるからこそ、何としてでも、今この世界でも同じ思いを味わおうとしていた。そのためには、美人な女子高生を探し出し、親しくする必要がある。どのイベントも女子がいなければ意味がないと考えていた。


 

 とりあえず、まずはクラスメイトの女子をしらみつぶしに誘うことに決めた飯島蓮人だった。以前、クラス内で連絡を交換し合う機会があった時に、クラスの女子の連絡先を手に入れ損ねたが、その後、体育祭の準備などでやはりクラス内での連絡先の交換は必要だということになった。その時に手に入れた連絡先が今、活躍するときである。


 さっそくクラスの女子全員に連絡を入れたのだが、誰もかれもが誘いを断ってきた。中には既読をせずに無視をする女子もいた。断る理由は様々だった。


 中でも多かったのが、忙しいという理由だった。


「部活で忙しい」

「塾の夏季講習があり、その予習復習で忙しい」

「宿題を早めに終わらせるために忙しい」


 

 前世では、夏休みで忙しいと思った記憶はなかった。イベントが目白押しで忙しいということはあったが、それは自分が楽しんでいたことだったので、忙しいという感覚はなかった。


 しかし、彼女たちの忙しい理由はそうではない。どう考えても楽しいものではない。


 飯島蓮人は常日頃思っていたが、この世界はやはり忙しすぎるのだということに再度実感させられた。しかも、誰もかれもが、勉強だ、より学力の高い大学進学のためには一に勉強、二に勉強といった具合である。


 すでに夏休み明けの高校生活が憂鬱になってしまった。


 

 誘いを断る理由は「忙しい」以外にも複数存在した。


「彼氏がいるから無理」

「友達と遊ぶから」

「ただのクラスメイトと一緒に遊ぶ理由がわからない」


 理由は何にせよ、断れていることに違いはない。結局、既読無視も含めて誰一人、飯島蓮人にとって都合の良い返事をくれる女子はいなかった。


 

 それでも、遊ぶ相手が欲しかった飯島蓮人は、最終的にクラスの男子にも連絡を入れるのだった。


 皮肉なことに男子の方は忙しいと断ったり、彼女と遊びたいと断るものもいたが、何人かは誘いに乗ってくれたのだった。


 夏休みを野郎と一緒に過ごすのは癪だが、相手がいないよりはましだろう。飯島蓮人はいいほうに考えることにした。 

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