第3章 地獄の夏休みが始まりました
1補習のといえども~他ごとを考えることにします~
今日から夏休みである。とは言ったものの、別にいつもと変わらない朝を迎えた飯島蓮人である。休みとは言ったものの、7月が終わるまでは毎日、補習という地獄が待っていた。
行きたくないと思いつつも、仕方なく学校の準備をしていると、妹が珍しく声をかけてきた。
「お兄ちゃんも、今日は学校があるんだね。もしかして、頭が悪いから補習とか。まあ、お兄ちゃんが何をしていようと別に関係ないけど。」
「お前こそ、今日から中学校も夏休みだろう。こんなに朝早く起きて、どこに行くつもりなんだ。」
「私は部活に決まっているでしょう。吹奏楽部に入ったから、夏休みも毎日部活があるんです。お兄ちゃんみたいに暇があるわけではないんだからね。」
そう言って、妹は家から出て行ってしまった。
「蓮人、あんたも早く家を出ないと遅刻するわよ。」
慌てて、時計を見ると、すでに7時40分を指していた。電車通学である飯島蓮人は通学時間が50分くらいかかるので、家を出なければならない時間だった。補習も授業と同じで8時40分から始まるので、妹に続いて彼も急いで家を出た。
学校に着くと、すでにクラスメイトの大半が登校していて、友達と思い思いに話をしていた。飯島蓮人は席について、その様子を観察する。そして、深いため息をつくと、机に伏せて、補習開始まで寝ることにした。
補習とは言っても、全然楽なものではなかった。授業の復習がメインとはいっても、そもそも授業自体についていけていない生徒にとっては地獄でしかなかった。プリントの問題を解くだけの作業でも、解き方がわからなければ苦痛でしかない。
補習開始早々に問題を解くのをあきらめた飯島蓮人は、今後の予定について思いをはせていた。
補習に宿題といろいろ学校からの束縛も多かったが、学校での束縛で一つだけ楽しそうなことがあった。体育祭の準備である。
体育祭は9月の終わりに行われる予定で、夏休みに準備をすることになっている。準備は3学年合同で行われることになっていた。
ということは、他学年との交流があるということだ。もちろん、そこで女子の先輩とお近づきになることもあるだろう。それが今の飯島蓮人にとっての楽しみだった。
前世でも体育祭があり、そこで、何人かの女子の先輩がと飯島蓮人は仲良くなった。先輩方も美少女ばかりで目の保養になっていたことを思い出す。
先輩ばかりに目を向けていると、同じ学年の4人の美少女たちに嫉妬されたり、やきもちを焼かれたりして、それはそれは良い思いをしていた。
そのような状況が起きる可能性があると知れば、がぜんやる気が出るものである。
体育祭はクラスごとに色分けされて行われる。1学年8クラスあるので、8色の色に別れて戦うことになる。1年1組、2年1組、3年1組と3学年合同のチームを結成して、8色で対抗するのである。
赤、青、黄、緑、紫、桃、白、黒の8色があり、各自色を決めて、その色に合わせたマスコットを作ることになっていた。
飯島蓮人のクラスのカラーは赤になった。体育祭では、マスコットを作成する班、応援団に入る班などに別れて夏休みに準備や練習をすることになっていた。
飯島蓮人はマスコットを担当する係になった。応援団はかっこいいとは思うが、身体を動かすことは得意ではなかったので、選ばなかった。応援団を選んだのはリア充満喫グループが多かったのも選ばなかった理由の一つである。
今日の午後に、初めて先輩との顔合わせが行われる。どんな美人な先輩に出会えるのか楽しみで仕方がなかった。
楽しみなことが顔に現れていて、補習中、終治にやけていた飯島蓮人を先生はあきれた顔で見ていたのに彼は気付くことはなかった。そのにやけ顔をにがにがしい表情で見ている九条華江の視線も気付いていないようだった。
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