10オタクグループの会話~ラノベの感想とサイン会について~
クラスは早くも3つほどのグループに分かれていた。一つ目はリア充満喫グループ。彼氏や彼女がいて、勝ち組ともいえるグループだ。いまだに彼女ができる気配のない飯島蓮人には縁のないグループである。
次に大多数が属する中間のグループ。リア充満喫グループまでいかないが、高校生活をそこそこ楽しんでいるグループである。
最後にオタクグループである。教室の片隅で飯島蓮人にはよくわからない会話をしている。内容は漫画やアニメ、ラノベについてであり、延々と語っている。
飯島蓮人はいまだにどのグループの輪にも入れずにいた。何を話していても、結局最後には前世と比較してしまって、会話に詰まってしまうからだ。それに気づいたクラスメイトは、飯島蓮人のことを敬遠するようになってしまった。
その結果、飯島蓮人はクラスで孤立してしまったというわけである。
ある日、彼らのグループで、飯島蓮人の前世とも思われる内容のラノベ「彼に惚れた少女たちは彼に全てを捧げる」についての話題で盛り上がっていることがあった。たまたまそばを通りかかったので、興味を持って話を近くで聞いてみた。
「いいよなあ。俺もこんな世界に転生したい。」
「俺も俺も。現実世界じゃあ、こんなにおいしい思いできないしなあ。」
「ほんとほんと。とはいえ、いくら転生したくてもできるわけないから。しょせん、小説の中だけの妄想だろう。」
感想を言い合っていたのだが、その内容はユウトに惚れた4人の美少女に発展していく。
「あの4人はいいよなあ。俺は断然カナ派だけど。幼馴染はやっぱり最高だ。」
「俺はリンちゃんだな。金髪ツインテールなんて俺の好みドンピシャ。それにうちの学年にいる七瀬梨花に似てるから、余計に気になるかな。」
盛り上がっていて、つい飯島蓮人もその会話に入り込む。
「彼女達4人とも美少女で、皆俺にべたぼれだったから、誰を選べと言われても選べないよな。4人とも主人公のユウトが好きみたいで、ユウトは本当にもてていたよなあ。」
いきなり会話に参加してきた飯島蓮人に彼らは驚いたようだった。
「飯島かよ。お前もこのラノベ好きなのか。」
「確かにお前、ラノベとか好きそうだよな。」
「俺は、ユウトは嫌いだけどな。ヒロインはかわいくて好きだけど、ユウトはクズ過ぎて好きになれないな。」
オタクグループの男子の一人が主人公であるユウトについての感想を言った。まさか自分の前世のことを悪く言われるとは思っていなかったので、飯島蓮人は一瞬、言葉を失った。それに気づかない彼らは話を進めていく。
「でもさあ、ラノベ作家はすごいよなあ。こんな現実世界にはあり得ない設定を思いついてそれを文字にできちゃうなんて。」
「そうそう。この本の作者もそうだけど、すごいよな。今度、作者のサイン会があるみたいだけど、お前応募したか。」
「まだだけど。確か今月までだったよな。」
「もしかして、その作者ってハレムのことか。サイン会って実際に本人に会えるんだよな。俺も行きたい。」
サイン会があるということは、作者本人に会えるチャンスである。どうやらこの作者はこれが初めてのサイン会になるようだ。
飯島蓮人もさっそくサイン会に応募することにした。サイン会はどうやら今年の秋に行われるようだ。サイン会で作者本人に会うことができれば、前世のことも今の現実のことも何かわかるかもしれない。
これはいい話を聞いたと、心の中でオタクグループに感謝する飯島蓮人だった。
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