9雨の日といえば~梅雨なんて最悪だ~
飯島蓮人は、あれから電車で出会った美少女と会えずにいた。なぜだか理由はわからないが、電車の時間が急に合わなくなったのだ。彼女との会話を楽しみにしていたのに残念である。
梅雨の季節に入り、雨が降って湿気が高くてムシムシしていた。外を見てもどんよりとした曇り空で憂鬱な気分になる。毎日が雨か曇りでは心までカビが生えそうである。
飯島蓮人は今日も天気に関係なく憂鬱な気分だった。飯島蓮人は、実は梅雨が嫌いではなかった。それがなぜ、憂鬱な気分なのか。
雨と言えば、傘を忘れて、可愛い彼女が傘を貸してくれて相合い傘、もしくはその逆で自分の傘を彼女に差し出そうとするが、彼女が申し訳ないといって、結果として相合い傘になる。
そんな定番なイベントがあってもいいはずだ。さらに雨と言えば、これまた傘を忘れた女子高生が雨に打たれて、制服が水にぬれてスケスケ、下着が見え見えのラッキースケベが拝める大事なイベントでもある。
これも忘れてはならない。突然の雨で傘を忘れてずぶぬれになった男女がどこかの屋根の下で出会い、そこから運命の恋が始まる。お互いに傘を忘れていて、ずぶぬれ状態。男女のどちらかの家が近いということで、二人はその近いほうの家に向かう。そこで順番にシャワーを浴びて……。たまたま、家には両親が出張か何かの理由で家には二人きりの状態で……。
雨というだけで、様々な男女のシチュエーションが頭に浮かんでくる飯島蓮人であった。頭に浮かんでくるのは彼の妄想ではなかった。すべて前世での出来事であり、彼にとっては全て事実だったのだ。
懐かしい思い出がよみがえった飯島蓮人だが、現実に戻り、落胆した。
まず、スケスケということはなかった。雨で制服が濡れることには濡れるが、女子は大抵、キャミソールやタンクトップを着ているので、それが透けて見えるだけで、大して目の保養にはなりはしなかった。
さらに相合い傘というものも難しい状況だった。飯島蓮人が通っている高校は田んぼの真ん中にある田舎の高校である。そのために近くに住宅がなく、生徒の90%以上が自転車通学をしている。
飯島蓮人は電車で通っているが、駅から高校までは自転車通学である。駅から高校までは自転車で20分くらいかかる。もし、徒歩で駅から高校まで行こうとすると、30分くらいはかかってしまう。
そのために、殆どの生徒が晴れた日も雨でもどんなに天候が悪くても自転車で通っている。だからこそ、相合い傘など夢のまた夢ということだ。
自転車通学のために飯島蓮人は雨が嫌いになった。中学の時は徒歩での通学だったので別に嫌いではなかった。
中学の時も、飯島蓮人は雨の日の男女のシチュエーションを思い出してはこの世界でもそんな楽しいイベントが起こらないかと期待した。しかし、何も起こらなかった。
傘は基本的に折り畳み傘を常備している生徒が多かった。相合い傘という状況が起こらなかった。さらには他人の家に上がり込んだとしても、家に誰かがいたため、二人きりということもなかった。
高校に期待しても無駄だった。高校はさらにひどかった。雨の日も自転車で登校しなければならない。傘さし運転は危なく、違反になるので、カッパを着て登校しなさいという校則があった。6月になってくると、気温も高くなってきて、カッパなど来ていると中で蒸れて気持ちが悪い。
雨と言えば、雷も定番だが、どうやらこの世界の女子は雷が平気な人が多いようだ。外で光っていても、特に怖がる様子もなかった。怖くて抱き着いてくるというシチュエーションもなかった。
そんなこんなで、すっかり梅雨が嫌いになってしまった飯島蓮人だった。6月に入り、むしむしする日が増えてきた。
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