6妹の話~ブラコンばかりではありません~

 飯島蓮人には3歳下の妹が一人いる。前世でも妹がいて同じく3歳年が離れていた。その妹はとても可愛らしく、彼のことが好きないわゆるブラコンだった。そして飯島蓮人もまた妹が好きなシスコンだった。


 しかし、この世界での妹は違った。むしろ、自分の兄のことが嫌いで嫌いで仕方のない様子だった。飯島蓮人が前世を思い出す前までは特に嫌われた様子はなかったのだが、前世を思い出したころから徐々に嫌われだしたような気がする。


 前世の妹はものすごい無防備だった。キャミソールにショートパンツ姿で家でゴロゴロしていたことが多かった。キャミソールから胸の谷間が見えていることがあって、妹なのにドキドキすることがあった。パンツが見えそうなくらい短いショートパンツで、隙間からパンツが見えていることもあった。

 家にいるときは常にその格好で過ごしていたので、年中彼の目の保養になっていた。


 それが今は全然ない。何も見えることがなくなった。そもそもキャミソールを着ていることは着ているが、それは下着としてであって、その上に必ずTシャツを着ていた。下も長袖のスエットを着ていて、生足が見える状態はない。ましてや長ズボンなのでパンツも見えることはなかった。


 夏はスエットからハーフパンツに変わるのだが、それでもひざ下までしか生足を拝めることがない。パンツが見える状況が存在しない。わが妹ながら、隙がないと何度思ったことだろうか。


 嫌うといっても、ふりだけということもあり得る。前世での妹はいわゆるツンデレだった。嫌い嫌いと言いながらも、けがや病気をしたときなどはものすごい心配をしてくれた。今はそれが全くない。


「別にお兄ちゃんのことなんか心配してないんだからね。」


 そう言って顔を赤らめていた前世の妹は本当に可愛かった。



 この世界の妹は、風邪で調子が悪くてベッドで寝ているときがあっても、心配して兄の部屋に来ることはなかった。さらには近寄らないでよ、風邪がうつるでしょうと冷たくあしらわれる始末だった。


 この世の妹は全てブラコンだとばかり思っていた飯島蓮人は、ショックだった。兄が大好き過ぎて、兄の彼女に対して「兄と別れてください、お兄ちゃんは私のものです。」といったこともなければ、逆に「こんなくそ兄貴なら、喜んで上げますよ。」という生意気な態度である。


 完全に嫌われているようだった。そもそも、彼と妹はあまり似ていなかった。飯島蓮人は頭の出来が悪かったが、妹は出来が良かった。テストの順位も1桁に入ることがほとんどで、親からも期待されていた。それに特に不満を言うこともなく、さらに勉強に励んでいた。



 一度、妹の友達が家に遊びに来たことがあった。その時に妹の友達に会うことがあった。軽く会釈をしてその場を離れたのだが、その際に「お兄さん、かっこいいね。」と妹に友達が話しているのが聞こえた。


 そんなことを言われて飯島蓮人はとてもうれしかったのだが、その後の妹の言葉は辛辣だった。


「顔だけはイケメンだけど、中身はくずだから。私は嫌いだけどね。というか、下品なんだよね。私の胸とか、足とか見てにやにやしてるし、気持ちが悪い。」


 妹の本音を聞いて、彼は妹が本当に兄を嫌っていることがわかった。だったら俺も妹のことなんか嫌いだと思うことにした。しかし、顔はかわいいし、スタイルもよく、容姿は整っているので、なかなか嫌いになれない残念な男だった。

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