5クラスの連絡手段~スマホ所持率100%ではありません~
高校生活も3カ月くらいたち、飯島蓮人は、この楽しくない高校生活にほんの少しずつ慣れ始めていた。
ある日、クラスの委員長的存在がクラスの連絡網を作ろうと言い出した。委員長ではないが、クラスの中心的存在の男子だった。今時、スマホ所持率100%と信じての発言だったのだろう。飯島蓮人は大賛成だった。この流れからクラスの女子全員の連絡先を聞けると思い、浮足立っていた。
賛成の声が多数上がり、昼休みにクラスメイトの大半が委員長的存在の生徒のところに集まり、連絡先を交換し合う。
その中の数人が、面倒くさいから連絡先を教えないと言い出した。しかし、委員長的存在の彼は、そのような生徒にも面倒くさがらずに教えてくれと頼み込んでいた。どうやらクラスの団結力を高めたかったようだ。9月に行われる体育祭や文化祭に向けて、連絡先を聞くことでクラスがより団結できると思ったらしい。
「俺、スマホ自体持ってないから、連絡取れないわ。もし、何かあっても俺のことは放っておいてくれて構わないから。」
そんなことを言い出したのは、クラスの中でもイケメンの部類に入る男子だった。
「なんか、特に必要なさそうだったから、スマホ持ってないんだよね。」
衝撃を受けた。今時、高校生にもなってスマホを持たない生徒がいるなんて信じられなかった。貧乏な家庭でもスマホだけは持っているというこの時代にどうしたことだろう。
クラスのイケメンがスマホを持っていないという事実を知ったクラスメイトも驚いていた。しかし、そうとわかれば、別に教えあわなくてもいいのではないか。呼びかけた男子生徒のそばからクラスメイトは離れていった。
呼びかけた男子はクラスメイトの、主に女子をみて嘆いていた。クラスの団結と言いながらも、実は女子の連絡先を聞くのが主な目的だったようだ。飯島蓮人も同じ気持ちだった。せっかく女子の連絡先を聞けるチャンスが台無しである。
「おまえ、マジでスマホ持ってないのかよ。どうせ、もてすぎるから、連絡先をこれ以上女子に教えたくないだけだろ。」
「いや、本当だって。別になくても問題ないだろう。家でもどこでも24時間つながっているのって嫌なんだよな。」
俺はお前のせいで女子とつながることができなかったんだぞ、どうしてくれる。 飯島蓮人は心の中でつぶやいた。
クラスの中にスマホを持っていない生徒がいるということは、もし、クラス内でスマホでの命令があったとする。それにこたえないと死ぬみたいなゲームが起こっても、彼は参加すらできないということだ。参加できないのは、クラスからのけ者にされていると同じことだ。死ぬことはなくなるだろうが、のけ者感が半端ない。
なんてかわいそうな奴だろう。飯島蓮人はスマホを持っていない生徒に同情した。自分以外すべてが参加しているゲームに参加できないのは辛いという考えから出た感情だった。
ただし、死ぬようなゲームなんかにはむしろ参加できない方が幸せだと彼は思わなかったようだ。
とはいえ、高校では校則で授業中に携帯やスマホの電源は切っておくようにと書かれていた。授業中に使っていることがばれると、反省文を書かされるようだ。授業中に着信音が鳴っても同様に反省文を書かされる。
スマホ所持率が100%に近い世の中なのになんて不便な校則があるのかと不満に思った飯島蓮人だった。しかし、実際にその校則を守っている生徒はほとんどいなかった。机の下に隠してSNSアプリでメッセージを送っている者や、ゲームをやっているものなどもいたので、ばれなければ気にするほどのものでもない校則だといえた。
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