4席替えをしましょう~窓際の一番後ろにはなりません~
高校生初の席替えがやっと行われた。今までの席があまりにも最悪すぎて、嫌気がさしていた飯島蓮人は朝から大喜びだった。
入学当初の席は、名簿順ということで、男子から順番に窓側から名簿順に席が割り当てられていた。そのため、窓側半分が男子、廊下側半分が女子という席の配置になっていた。
飯島蓮人はその配置に大いに憤慨していた。それもそのはず、彼の苗字は飯島で、席は教室の一番窓際の前から2番目だったので、隣は男子で周りも見渡す限り男子であった。
それがやっと解放されるのだ。喜ばないはずがない。いったい、席替えでどんな女子と近くになれるだろうか。そればかりに気を取られていて、肝心なことに気付いていなかった。
前世では、飯島蓮人はなぜか女子からモテモテだった。ハーレム要員としての生徒会メンバーはもちろん、そのほかの女子からも人気があり、女子の方から話しかけてきたので、彼はそれに答えるだけでよかった。
しかし、現在は状況が違う。もし、自分好みの女子がいても、自分から話しかけないと接点を作れないのだ。
女子の他に彼には席の希望があった。窓際の一番後ろの先生から一番遠い席を狙っていた。前世では大抵その席だったので、今回も運よくそこになるだろうと過信していた。
席替えはくじ引きで行われた。黒板に座席表が書かれていて、席には番号が書かれている。くじにも1から40までの番号が振られていて、自分が引いた番号と黒板の座席表の番号を照らし合わせて、自分の席を見つけるという方法だ。
そのまま引くと、男子と女子が固まってしまうことがあるので、女子は女子、男子は男子でくじを引くことになった。
くじが入った箱は教壇に二つあり、男子用、女子用となっていた。くじを引く順番は名簿順だったので、すぐにくじを引くことができた。
くじを開いた飯島蓮人は黒板の数字と照らし合わせて、本日もまた落胆した。窓側の一番後ろの席はどうやらダメだったようだ。
彼の席はなんと、教壇の真正面の一番前の席だった。先生が一番近い席ともいう。寝ていようものならすぐに気付かれる。早弁や宿題、ゲームにSNSアプリの更新も何もすることができない。やろうものなら即座に先生からの説教が待っている。
あまりのショックに彼は周りの音が一気に聞こえなくなった。小学校や中学校のように目が悪いので席を変えてください、背が高い人が前で黒板が見えません、などという苦情は一切受け付けてくれないようだ。
といっても、飯島蓮人の席が変わることはないだろう。身長がものすごい高く180cmを超えるくらいあれば別だが、飯島蓮人はそこまで身長が高くなかった。
彼はおとなしく、新しい席を認めるしかなかった。席替えはこのクラスではどうやら3カ月に1回のようだ。次の席替えまでの3カ月をこの地獄のような席で過ごさなければならない。
クラスメイトが席を移動し始める。彼もその流れに沿って移動する。改めて席についても違和感が半端ない。こんな席で授業中何をして過ごせばいいのだろうか
そんなことを考えながら、新しい席の周りを見渡す。すると、意外と周りのメンバーは悪くないと思った。隣の席はなんと、九条華江だった。
九条華江も自分の席に落胆しているようだった。さらには隣の席がまさかの飯島蓮人で落ち込みようが激しかった。
逆に飯島蓮人はラッキーだと思った。彼女には前世のことで聞きたいことがたくさんあった。この席では授業中の私語はできなさそうだが、休み時間には話すことができる。
こうして、飯島蓮人にとって最悪な席替えが終わった。
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