2身だしなみ検査~スカート丈について~

 今日は身だしなみ検査の日である。抜き打ちで3カ月に一回ぐらいあるようだ。髪の毛の色はもちろん、化粧やピアス、女子はスカートの長さをチェックされる。高校生にもなって身だしなみ検査とかどうかしていると思うのだが、実際にあるのだから仕方ない。


 飯島蓮人は女子でもないのにこの検査が不満だった。理由は簡単で、この検査によって女子が化粧もできずにスカートの長さも長くせざるを得ないからだ。この検査以外でも生徒指導はもちろん、他の先生も誰もが髪の毛の色や女子のスカートの長さを常に監視していた。


 女子たちはこの時のために対策を立てている。どうやら本来のスカートの長さは、意外にも膝が隠れるくらいであることを彼は初めて知った。膝より少し長めのスカート丈が校則となっているのだが、どちらにせよ飯島蓮人が求めているスカートの長さに達していないので、納得できなかった。


女子たちは律義にも、普段はスカート丈を短くするためにスカートの上の部分を折り曲げているようだった。そして、ベルトを着けて長さを調節していることも飯島蓮人はこの時初めて知った。


 わざわざスカートを曲げたり、ベルトをつけたりして丈を短くしているということは、女子もやはりスカートは短い方が好みのようだ。


 この検査でスカートの長さに引っかかっている女子がいた。検査に引っかかった生徒は、一週間以内に直さなければならない。スカートの場合は新しいものを買いなおすか、誰かからもらうかして、校則に違反しない長いスカートを手に入れなければならない。


 

 全くくそみたいな検査だった。そんな検査をしてまでどうして、校則を守らなければならないのか。不満を前の席の男子に訴えると、その男子生徒はあるアドバイスをくれた。


「そんなに不満なら、校則を変えればいいと思うよ。それか、制服自体を変えるのもいいかもしれないね。」


 そのアイデアは思いつかなかった。飯島蓮人はどうやったら校則や制服を変えることができるのか、その男子から詳しく聞き出す。


「やり方自体は難しいことではないよ。実際にできるかどうかは別として。生徒会に入って、校則や制服が変えたいことを校長や先生に言えばいいんだよ。さらに全校生徒に訴えて賛同を得ることができたら、もしかしたら変えることができるかもしれない。」

 

 

 生徒会か。前世では絶大な権力を持っていた。それこそ、先生たちよりも確実に偉い立場にいたような気がする。そして、自分たちのやりたい放題に学校運営を行っていた。生徒会室はやたら豪華だった。生徒会権限とか言って、授業を無断で休んでも先生に怒られることがなかった。出席日数が足りなくなることもないので進級にも問題がなかった気がする。


 そんな彼らは、学校中の憧れの的だった。生徒会にいるメンバーは誰もがうらやむようなイケメンや美女ばかりで、さらに頭もよかった。アイドル的存在で崇拝者も多くいた。メンバーそれぞれに親衛隊なるものも存在して、とにかくすごかった。


 前世の飯島蓮人が通っていた高校では、彼と付き合うことになった4人の美少女たちが生徒会メンバーであった。しかし、それ以外の高校でも生徒会には絶大な権力があり、イケメンや美女ぞろいだったと思う。


 彼女たち4人は飯島蓮人に惚れて、彼を生徒会に引き込もうと必死だった。しかし、彼は面倒くさいことは嫌いだったので、3年間、一度も生徒会メンバーになることはなかった。


 さて、この学校の生徒会はどうだろうか。朝の正門で見かけることもないし、クラスメイトが生徒会について何か言っているのを見たことがない。誰が生徒会長なのか、誰が生徒会メンバーなのかも全然わからない。



「生徒会だけど、面倒くさいだけで何も良いことがないらしいよ。誰もやる人がいなくて、先生たちが生徒に頼み込んでやっとのことで選んでいるらしいよ。」


 生徒会についてその男子生徒は追加の情報を教えてくれたが、飯島蓮人はそんな話は聞いていなかった。


 生徒会に入って、この腐った校則を変えてやる。彼はただ、それだけを懸命に考えていたのだった。

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