12テストの順位発表~今時順位は発表されません~

 結局、テスト勉強をろくにしないまま、飯島蓮人はテスト当日を迎えた。テストは3日にわたって行われ、テスト日程が終わった3日目には飯島蓮人は生きる屍と化していた。


 テスト結果はもちろん、散々なものだった。全教科赤点という結果で、担任にどうしたらこんなに悪い点数を取ることができるのか、逆に教えてほしいとまで言われる始末だった。


 赤点を採ってしまったわけだが、実際はこのテストだけで赤点と判断されることはない。次の夏休み前のテストの点数を足して2で割った平均が、クラスの平均点の半分を切っていたら赤点となる仕組みとなっているようだ。


 その事実を知り、彼は安心した。要は次のテストで平均点を採ればよいだけの話だと楽観的に考えていた。


 自分のテストのことに気を取られていたのだが、彼はまた一つ前世との違いを見つけた。テストの順位が発表されないことだ。これでは誰が頭が良くて、誰が悪いのかがすぐにはわからない。


「今回のテストの学年1位は隣のクラスの男子だって。」

「2位も隣のクラスの女子だって。うちのクラスは学年最下位がいるっていう噂だから、隣同士なのにまるで正反対だよねえ。」


 そう思っていたのだが、実際は頭が良い人と、悪い人のうわさはどこからか流れていくものである。すでに学年トップと最下位についての情報は出回っているようだ。

 ちなみに彼は幸いなことに学年最下位ではなかった。とはいっても、最下位に近い順位ではあったので、いばれるほどのものでもない。


 せっかくなので、学年トップの学力を持つという男女を一目見てみようと彼は隣のクラスに足を運ぶ。その男女はすぐに見つかった。テスト結果が返ってきて、話題に欠かせないのだろう。


 彼は学年一位の男子と女子がこのクラスにいるようだが誰なのか、近くにいた生徒に聞いてみた。いきなり話しかけられた生徒は少し驚いていたが、すぐに教えてくれた。


「あそこのクラスメイトに囲まれている男子が学年トップで、教室の隅で読書しているのが、女子のトップで確か学年2位だったと思うよ。」


 教えてくれた男女を観察すると、二人は正反対の性格に見えた。男子の方はクラスからの人気も高いようで、クラスメイトから今回のテストでの順位の話で大いに盛り上がっている。背が高く、イケメンでこれは女子からもてそうである。


 女子の方はというと、一人黙々と読書に没頭している。メガネをかけていて、いかにも真面目そうな雰囲気である。ただし、髪はショートでみつあみはしていない。


 飯島蓮人は特に声をかけることなく、そのクラスを後にした。別に頭が良いからといって学校生活が楽しくなるというわけではない。前世での経験から彼はそのように思っていた。しかし、さすがに次のテストでも赤点を採るわけにはいかないので、少しは勉強をしておかなくてはと思っていた。




「ユウトだあ。」


 突然、後ろから声をかけられた。思わず振り向くと、そこには金髪ツインテールの小柄な美少女が立っていた。しかし、彼の名前は飯島蓮人であり、ユウトという名前ではない。しかし、彼はとっさに答えていた。


「リンだよな。お前も転生していたのか。」


 そう、彼女は前世でハーレム要員の一人であった、リンと呼ばれていた美少女ととてもよく似ていた。

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