⒒定期テストが始まります②~休み時間は有効に使いましょう~
テスト週間に入り、初日からテスト勉強に挫折してしまった飯島蓮人だったが、それではさすがにまずいと思っていた。何しろ、テストの成績が悪くて赤点をとれば、補習や進級に問題が出てくるのは頭の悪い彼でもわかっていた。
勉強が嫌いな彼には、補習や進級以外に勉強しなければならない理由があった。クラスのテストに対する姿勢に圧倒されたからだった。
彼が通う高校はいわゆる進学校と呼ばれる高校で、大学進学率が高いということを売りにしている高校である。そのため、通う生徒は大抵、大学に入るために必死に勉強している。
高校1年生初のテストということもあり、クラスのテストに対するやる気は高まっていた。普段の休み時間は、友達とわいわい雑談を話しているごく普通の高校生のクラスだが、今は様子が違っていた。
クラスの半分くらいが、テスト勉強の話で盛り上がっている。
「昨日はどこまで復習したか。」
「出された課題はどこまで進めたか。」
「テストに出そうな問題は。」
勉強が苦手な彼はもはやクラスにいるだけで吐き気を催しそうだった。すでにクラスの雰囲気についていけず、休み時間のたびにトイレに駆け込む始末だ。
ある休み時間にまた彼がトイレに駆け込もうとすると、九条華江が話かけてきた。彼女とは裏庭での一件以降、特にかかわりなく過ごしてきたのだが、いったい何の用だろうか。
「テスト勉強ははかどっているのか聞きたかっただけよ。前世みたいに先生に色仕掛けしても無駄だから、その忠告をしに来ただけ。」
それだけ言うと、すぐに彼から離れていった。その背中に思わず飯島蓮人は声をかけた。
「カナ、お前こそテスト勉強大丈夫なのかよ。俺との勉強会を断ったくらいだから、さぞかしテストには自信があるんだよな。どうしてもというなら、俺と一緒に勉強会してやってもいいぜ。一度は断られたが、俺とお前の仲だし、俺の誘いを断ったことはなかったことにしてやるよ。」
「気安くカナって呼ばないでくれるかしら、飯島蓮人さん。私には九条華江という名前があるの。それに私はあんたが嫌いなの。嫌いな奴と二人きりで勉強会なんて反吐が出そうだわ。あんたと違って私は普段から真面目に勉強してるから平気よ。おバカな誰かさんと違って、テスト週間にそこまで焦らなくてもいいのよ。」
飯島蓮人の言葉に振り替えることはせず、立ち止まったまま冷たく返事をする九条華江。そして、用は済んだとばかりに足早にその場を去っていった。
残された飯島蓮人はあっけにとられていた。前世でのカナは、性格はおとなしめで、面倒見の良い幼馴染だった。それがどうして荒んだ攻撃的な性格になってしまったのだろうか。
やはりこの世界が悪いのだ。こんなつまらない退屈な世界に転生して、彼女もイライラしているのだ。それで自分に対して攻撃的なのだ。
飯島蓮人はとりあえず家に帰って勉強しようと思い、いつもは教室に置きっぱなしの教科書やノート、問題集を鞄に詰めて持ち帰った。
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