10定期テストが始まります①~テスト週間の過ごし方~

 飯島蓮人は、前世では赤点ギリギリはしょっちゅうで、常に留年の危機に瀕していた。そのたびに、担任の若い巨乳の美人教師を説得して、無理やり赤点を回避してもらっていた。

 その若い女教師は若い男が大好きだったので、ちょっと彼が頼み込めばすぐに赤点も留年についての問題も解決してくれた。


 だからこそ、今回もそれで何とかなると思っていた。しかし、今回の担任は中年のおばさん先生である。

 その担任はどうやら頭の悪い生徒が大嫌いで、そして男も嫌いだという情報が入ってきた。自分に当てはまることばかりで、前世で頼み込んだように説得できるわけもなく、赤点回避はできないだろうなと彼は考えていた。



 高校に入って初めてのテストがもうすぐ始まる。今週はそのテストの一週間前。いわゆるテスト週間と呼ばれる一週間である。部活動は原則休みで、生徒はテストに向けて勉強に励むことになっている。


 飯島蓮人も一応、テストに向けて勉強しようと準備を進めていた。彼の場合、何事を始めるにしても、前世と比較してからの行動になるので、大抵周りから可笑しな目で見られてしまう。


 今回もまた、前世の記憶にとらわれた行動をしていた。


 彼は前世ではテスト週間にはハーレムたちと楽しくキャッキャうふふの勉強会を行っていた。学校の図書館やファミレス、自分の家や彼女たちの部屋など、様々な場所で勉強会は行われた。はたから見たら、勉強会とは到底思えない、ただの男女のイチャイチャだが、本人たちはいたって真面目にテスト勉強に励んでいたというのだから、そうなのだろう。


 飯島蓮人は前世同様、楽しい勉強会にしようと張り切っていた。そして、恒例のクラスメイトの声掛けである。


「どこかで一緒に勉強しないか。」


「いいけど、学校の図書館はHR終わってすぐにいかないと席が埋まってしまうから、早めに行かないとだめだよ。」


 

 何と、心優しい男子が一緒に勉強してくれると言い出した。やっと俺の高校生活は楽しくなり始めたとウキウキして放課後になるのを待っていた。

 ちなみに飯島蓮人は、本当は女子と勉強会なるものをしたかったが、誘ってみたがすべて断れてしまった。女子は同じ転生者であるカナ、今の名は九条華江筆頭に、誰一人誘いに乗ることはなかった。


 

 ようやく放課後になり、二人で大急ぎで図書室にむかう。すでに図書室には数人の生徒が中にいて、机に勉強用具を広げていた。


 それに負けじと彼らも空いている机に勉強用具を広げていく。飯島蓮人の誘いに応じた男子はすぐに数学の問題にとりかかり始めた。彼も見習って同じように数学の問題を解こうとノートと問題集を広げる。


 とはいえ、彼には致命的な問題があった。そもそも、学力が足りていないのだ。授業中は退屈過ぎて、部活動もしていないのに爆睡している。当然授業は聞いていない。さらには、各授業で出た宿題もほとんど提出していなかった。

 つまり、普段全くと言っていいほど、勉強をしていないのだ。

そんな彼がいざ、数学の問題を解こうとノートを広げたところで何ができるというのだろうか。否、何もできるはずがないのだ。


 彼は思い切って、目の前で黙々と問題を解いている男子に教えてもらおうと声をかけた。帰ってきたのは、冷たい一言だった。


「図書室は私語厳禁だよ。」


 開始早々、飯島蓮人はやる気を失った。そして、広げた荷物をかばんに詰め込むと席を立つ。男子はちらと彼を見やると、何も言わずにまたノートに視線を移して、勉強を再開する。


 これ以上はやっていられないと思った彼は、図書室を出て帰宅しようとした。途中で教室の前を通りかかると、彼にとって驚きの光景が目に入ってきた。


 もうとっくに帰りのHRが終わったというのに教室には人が数人残っていた。何をしているのかと覗いてみると、みな、机に向かって何かをしている。図書室でも見た光景だった。


 何と、教室でも勉強をしている生徒がいるのだ。図書室ですでに勉強をあきらめた彼は無言で教室を後にした。そして、速攻で家に帰り、テスト勉強そっちのけでベットに潜り込む。


 この世界はなんて勉強熱心なんだ。ついていけない。オソロシイセカイ。彼はガタガタベットの中で震えていた。

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