9お弁当はどこで食べましょうか~屋上は立ち入り禁止です~

 飯島蓮人はお弁当を食べる場所を探していた。今日はとても天気が良かったので、教室とは違う場所でお弁当を食べたい気分だった。

 前世では天気の良い日は大抵、屋上か中庭で食べていた。彼以外の生徒も同じ考えで、天気の良い日には教室でお弁当を食べる生徒は少なかった。


 しかし、この世界ではどうやらそれが普通ではないようだ。中学の時は給食が出ていたので教室で食べることが普通だと思っていたが、高校は弁当だ。だからこそ、どこで食べようが自由だと思っていた。


 彼は屋上で弁当を食べようと考えた。クラスメイトに一緒に屋上で弁当を食べようと誘うとすぐに断られた。


「また、お前かよ。屋上なんて開いているわけないだろ。どんだけラノベにあこがれてるのか知らないけど、いい加減、現実を認めた方がいいと思うぞ。」

「屋上なんて行きたいとも思わないけどな。日差しがきついし、風も吹くだろうし、行く意味がわからない。それでも行きたいなんて、どんだけ中二病だよって感じだけど。」


 すでにクラスメイトの中で、飯島蓮人という人物は、頭の中が中二病の痛い人となっているようだ。


 それでもあきらめずに彼は屋上に向かった。特に何も考えずに屋上へと続く扉の前までやってきた。

 ところが、屋上に続いているドアは施錠されていた。こっそり職員室に言って鍵を拝借しようとしたが、先生に見つかり説教されてしまう始末。どうやらこの世界では屋上は解放されておらず、常に閉鎖されているようだった。


 屋上が閉鎖されているということは、秘密の話し合い、決闘など、高校生活の様々な場面で使われていた場所が一つ減るということだ。それに授業をさぼりたいときに行く場所も減ってしまう。彼はショックを受けた。

 


 だが、今考えるべきことではないと思いなおす。今考えなければならないことは弁当をどこで食べるかということだ。


 屋上がダメならば、中庭ならどうだろうか。中庭に行ったが、誰一人生徒も先生もいなかった。


 結局、彼は教室で弁当を食べることにした。教室以外での食べる場所として、屋上や中庭以外にも食堂が候補として存在していたが、それもないことがわかった。


 前世では食堂が完備されていた。飯島蓮人は金欠のことが多かったのであまり利用することはなかったが、利用している生徒は多かった。食堂は二つあり、一つは生徒会専用の食堂で一般の生徒は入ることすら許されていなかった。

 もう一つは一般の生徒用になっていた。飯島蓮人は生徒会のメンバーではなかったが、生徒会のメンバーに好かれていたので、生徒会専用の食堂を利用することがあった。


 

 なんてつまらないお昼タイムだろうか。そう思いながら教室で弁当を食べようとしたが、そこでふと考える。


「俺は誰と弁当を食べればいいのだろうか。」


 そう、彼は前世ではハーレムの美少女たちが勝手に近寄ってきて、わいわい楽しいお昼タイムを過ごしていたのだった。それがこの世界ではおこりそうにない。


 

 飯島蓮人は、前世でのことを思い出す。カナ、リン、モモカ、カズサの4人と一緒に過ごした日々はどれだけ楽しかったか。思い出すと無性に彼女たちに会いたくなった。カナは自分と同じように転生していたが、他の彼女たちはどうだろうか。


 前世を思い出しつつ、とりあえず、クラスの男子に声をかけて一緒に弁当を食べることにした。男子と食べる弁当よりも美少女たちと食べる弁当の方が格段に楽しくおいしくいただけると彼は思った。

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