8体育の授業②~着替えの方法~

 体育の授業は退屈だった。そもそも、授業は男女別々に行われた。そのせいで、男子高生だけのむさくるしい環境で身体を動かすだけという、飯島蓮人にとっては最悪でしかない一時間だった。

 授業は外で行われ、校庭をひたすら走らされた。女子は体育館で別の競技を行っているようだ。ぜひともそちらの様子を見学したかったのだが、男子は校庭にいるので見に行くことはできない。


 日差しが照り付け、気分も悪くなりかけてきたころ、やっとチャイムが鳴り、授業が終わりを告げた。

 これ以上外にいたら、溶けてしまいそうだと思っていた飯島蓮人は、あいさつが終わるとすぐに教室に戻った。

 

 戻る途中、女子更衣室の前を通り過ぎたのだが、ふと立ち止まって考える。授業前は突然女子が自分の前で着替え始めて驚いたが、実際に女子は普段、どのように着替えを行っているのだろうか。


 前世では、女子の制服の下はすぐに下着だった。着替え方は制服のブラウスをいったん脱いで、ブラ姿になる。その時にスカートも脱いでいるので、いったん下着だけを身につけた状態になる。そこでトラブルが起きれば、必然的にその姿のまま更衣室の外に出ることになる。それを見ることができたというわけだ。



 さて、この世界の女子はいったいどのように着替えているのだろうか。こっそりと飯島蓮人は女子更衣室を覗いてみた。なぜか周りには誰もおらず、彼一人が女子更衣室のドアにへばりついていた。


 そおっとドアを少しだけ開けてのぞくと、女子たちの着替えの様子を見ることができた。それは彼の想像していた姿とは異なっていた。さらには、前世での着替えの様子も何度か目撃したことがある彼にとっては衝撃ともいえる着替え方だった。



 まず、ほとんどの女子が下着を見せずに着替えていた。上半身は体操服のTシャツの袖から腕を抜いてTシャツの中から手を出し、その手で持っていたブラウスに袖を通す。しかもその下にはキャミソールやタンクトップなどを着ているので、もし万が一見えたとしてもブラや胸の谷間が見えるということはない。

 体操服の下のジャージの着替え方も彼にとって目からうろこだった。スカートをジャージの上に履いて、その後にジャージを脱いでいた。これでは全くパンツを見ることができない。


 この方法の逆の手順を踏めば、簡単に制服から体操服に着替えることができる。ジャージをスカートの下に履いて、その後にスカートを脱ぐ。制服の上は、まず体操服のTシャツを頭からかぶり、かぶった状態でブラウスのボタンをはずす。はずし終わったら、袖からぬいてTシャツの袖を通すという感じである。


 これでは覗いても楽しいことはない。そっと飯島蓮人は女子更衣室のドアを閉じて、静かにその場から立ち去った。


 

 体育は授業が暑くて、むさいだけで何も楽しいことがない。そもそも、飯島蓮人は運動があまり得意な方ではなかった。女子の着替えもガードが堅いので、一気に体育の授業が嫌いになってしまった。


 教室に戻ると、すでに男子も女子も着替えを終えていた。そして、女子更衣室から戻ってくる女子生徒もいた。


 飯島蓮人は人前で堂々と着替える勇気がまだなかったので、仕方なく男子トイレでこっそり一人寂しく着替えることにした。

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