4-16 ラストバトル3

「でも、どうして争いたがるの?理科は・・・

科学者っていうのは・・・

ただ純粋に役に立ちたいと願っているだけなんだよ。

文系の人も含めてみんなが幸せに・・・。」

「黙れ黙れ黙れ!その上から目線を今すぐやめろ!!

それは支配者である理科側の人間の理屈だ。


貴方はこの町の・・・

食物連鎖の肉食動物のように振る舞う、“この街の異常性”を何一つ理解していない。」

「えっ?」

「“理系”ばかりで構成されたこの都市の紡ぎ出している新しい技術はね、今や世界のあり方を決めているの。創造主気取りでね。」

確かに理系と呼ばれる技術者は人口比率で考えるなら少数派である。そしてさらに、革命的な技術というものはほんの一握りの天才が数十年に一度だけ生み出す奇跡。

歴史を紐解けば、そこに資本が集中し世界の経済は回っているのも事実で、食物連鎖のピラミッドで表すのは、なるほど言い得て妙である。

「でもだからって、世界を動かすのが技術者ばかりとは・・・。」

「違うとでも言うの?!

電気、水道、ガス、交通網、通信技術、医療。

動植物の命を握る社会の基盤は全て理科が支配した。この状況で、


“文明を持つ以上、人間はそれに従って生きるしか無い。”


そう言われて文系は理系の振りかざす技術という名の凶器の言いなりになるしかなかったのよ!」

そんなの歪んだ被害妄想だ。

「私の目的はね。理系の支配するこの世界から文系を社会的に解放すること。理科を一旦、リセットし、この狂った世界を正常に戻すの。」

「狂っているのはアンタの思想の方でしょ。」

「狂ってなどいない!

生まれた時から当たり前として洗脳され、誰も口にしないだけ。私はそれに気がついた。


戦争、異常気象、環境汚染。

人類を境地に追い込んでいるのはいつの時代も、生活の【間近】にある理科の技術なのよ!」


“理科なんてなくなればいい!”

文明の甘い汁が大好きな理科嫌いの子どもがよく口にする負け惜しみ。

パンディットの信念はそれとはわけが違う。

支配者である理科が存在しない、平等で平和な世界。その実現のために、文明を手放し、人類から本気で理科を切り離そうとしている。


厄介な上にその構成は異様に強固だ。


技術を生み出すから世界を支配してるなんて考え方、科学者はこれっぽっちも思っていない。そのことをわからせないと。



ーーー「そろそろ時間だわ。」


飛行船が町の中心部、ターミナル駅上空に達したところで、パンディットは再び鍵を取り出した。

「私は現代社会の存続。今の理科を守る!」

「フン!

やれるものならやってみろ、マジカルマヂカ!!」



パンディットと装置の距離は数メートル。

装置の起動に必要な動力源、元素の鍵はパンディットの手にある。

ここに来るまでに白い日傘のカートリッジは賞味期限切れ(?)のものも含めて全て使ってしまっている。

私自身の魔法少女としてのチカラは残りわずか。

そもそもパンディット相手に肉弾戦を挑むなど論外だ。

この状況で妨害をするとなると・・・

「ケットシー!!」

「了解!

“ルナティックレイン!”」

私の号令でケットシーが特殊能力を使う。

幻覚を見せる霧がパンディットの周囲を覆った。

「くっ、これは使い魔の特殊能力か?!」


人間の位置情報は視界による部分が多く、いきなり目を塞がれると、まっすぐ歩くことも出来ない。生物使いであるパンディットも例外ではなく膝をついて這いつくばっていた。


作戦成功。ここからは音による情報は相手に位置情報を与えてしまうことになるので、皆さまお静かに願いたい。

あとはなんとかして、鍵を奪い取れば・・・

私はそう思っていた。

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