2-11 ヤタガラス編19

「ヤァアアアッ!!」

私たちの話など聞いていなかったかのように、マツリはヨルムガンドに飛びかかっていた。

「この!この!ヤタガラスから、離れろ!!」

これまで繰り出していた美しい型の妙技はナリを潜め、ヤタガラスに絡みついた蛇を引き剥がすことに必死だった。年頃の女子中学生なら目にするのも躊躇するような巨大な蛇の尻尾をがっしり掴んでいる。

「くぬぅー。」

だが、四肢が無く、全身が筋肉である蛇を引き剥がすのは困難を極めた。弱らせるために、パンチやキックをしてみても、蛇特有の鱗を纏った分厚い皮がその衝撃を分散させる。


そして、大きく開けた口から鋭く伸びた牙が、ズブリと音を立てヤタガラスの首筋に食い込んだ。

「ダメッ!!」

「カアアアアアッ!!」

「ヤタガラス!!」



「離れなさい!」


よく通るオペラ歌手のような芯の通った声が木霊すると、大きな握りこぶしほどの石がヨルムガンド(とヤタガラス)目掛けて真っ直ぐ飛んだ。

「シャアアァァッ!!」

そして見事にヨルムガンドの頭部に直撃する。

衝撃で噛みついていた口を離し、ヤタガラスへの巻きつきは解けていた。


石を投げた人物それは・・・


「初速と重力を計算に入れれば石もソフトボールもほぼ同じね。」


仮面で顔を隠した女性だった。

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