2-3 マツリの回想2
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ベランダで見つけた一匹の弱ったカラス。
よく見ると脚が三本ある。
「ん?突然変異かな?」
その時の茉理は神話に出てくる三本足のヤタガラスの存在を知らなかった。(この辺りの歴史はそれほど詳しく学習する単元ではないので、知らないのも無理はないのだが。)
「カ・・・カァ・・・。」
茉理が近づこうとするの察知してカラスが逃げようとする。しかし、弱った身体ではそれも許さず、三本の脚がもつれて倒れこむと怪我をしている羽根をかばうように茉理に背を向けた。
「羽根を怪我しているの?」
「カ、カァァ。」
「酷い怪我。」
羽根のような複雑な部分の骨折は、いい加減な形のまま骨がくっ付いてしまうと本来の機能である【飛ぶこと】が出来なくなってしまう。
だから、添え木をして患部が動かないように固定する必要があるのだ。
「あ、動かないで!」
茉理は急ぎ部屋に戻ると、机の上にあった未使用の鉛筆と髪留め用の紐を合わせてささっと固定具を作る。
そして、患部に消毒と簡単な手当てを施し、抱きかかえて部屋に招き入れた。茉理の丁寧な処置にカラスはもう抵抗などせず、身を預ける格好になっていた。
「私は茉理。花園茉理。
カラスさん、あなたはどこから来たの?」
「・・・マツリ。」
「!?」
「マツリ、マツリ。」
「しゃ、喋った?!」
少し驚く茉理であったが、すぐにカラスや九官鳥などの行う声帯模写のことが頭に浮かんだ。
カラスは鳥類の中でも特に頭が良い。出て来た名前を瞬時に覚えて口にした。そう考えれば喋ったことなど何も不思議なことではない。
しかし、次の言葉には驚きを隠すことは出来なかった。
「ありがとう、ございます。」
「えっ?!」
しかし、その先の言葉はなく、カラスはうずくまり眠りについていた。
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