2-2 ヤタガラス編13
ーーー
「あなたと、契約したい。」
ケヤキの枝に留まる不死鳥に向かって、私はそう言った。
「上位召喚獣と魔法契約じゃと?!」
「・・・契約?」
気持ちが先行して言葉を発してしまったが、プランはきちんと考えてある。
「勿論、私とじゃない。」
「?」
「この子と契約して欲しいの。」
今まさに命の炎が尽きようとしている茉理ちゃんを救うには、生命のチカラを操ることのできる召喚獣、不死鳥フェニックスに頼るのが妥当である。だが、一寸の虫にも五分の魂という言葉の通り、生命を救うというのは安いモノではない。そこで考えたのが、魔法契約だ。
理科世界の召喚獣たちはどういうわけか、いつの時代においても、魔法使いを意図的に生み出し途絶えないようにしているフシがある。
天才少女の茉理ちゃんは理科世界的にも失うには惜しい人材であるはずだ。
「・・・貴女、なかなか面白いわね。」
フェニックスは炎の翼をしばし休め、考えたそぶりを見せてそう言った。
この間にも茉理ちゃんの容体は悪化していく。
だから私は必死で茉理ちゃんのセールポイントを語った。
「中学生でありながら、ヤタガラスと賢者の契約をしている子で、そのチカラも申し分ないと思う。」
「へぇ~。」
「あと、バレエを習ってて生物学のチカラとの相性も抜群。」
「・・・。」
「だから、興味を持つのなら、この子と賢者の契約して欲しいの。」
「うーん。・・・お断りだわ。」
「?!」
嘘でしょ?この状況で断る!?
「私が興味を持ったのは貴女の方よ。」
「そ、そんな・・・・。」
「でもまぁ。助けてあげないこともない。」
「じょ、条件は?」
私は一も二もなく飛びついた。今の状況をどうにかするにはフェニックスと契約する以外、他に手がないからだ。
「その子と契約するなら、魔法少女。」
「えっ?」
その瞬間、フェニックスの出した条件の意味を全然理解出来なかった。
「いやいやいや。この子は確かにまだ小さいけれど、賢者の素質があって、実力も十分。わざわざ魔法少女の契約をしなくても・・・。」
花園茉理はすでに大学への飛び級をするほどの知力を備え、賢者としてヤタガラスと契約する知識の探求者である。
現実主義でロジカル思考のこの子には、少女としての夢を形にする魔法少女は不向きだろう。
それにそもそも、魔法少女としての素質が備わっているのかは疑問である。(私が言うのもなんだが。)
「何言ってるの?
賢者の素質を持っていながら、わざわざ魔法少女にするから“面白い”んじゃない?」
「なっ!?」
その瞬間、カトブレパスがフェニックスのことを色々と愚痴っていたのを私は思い出した。
合理性は無視。フェニックスはおそらく常識の通じない気分屋なのだろう。これにはきちんとした議論の余地があるはずだ。
しかし今は、気を失っている契約者本人である茉理ちゃんの意思も確認することは出来ない。
だから私の答えは・・・。
「・・・いいわ。
やって。」
「お、おい!」
「りょうかーい。」
焦るカトブレパスを尻目に、フェニックスは構わず茉理にキスをした。
「また、勝手なことを・・・。」
「しょうがないでしょ。他に手が無いんだもの!」
いつものことだけど・・・。
「まったく・・・。今回ばかりは庇いきれんぞ。」
上位召喚獣との魔法契約。しかも、理科世界管理局には属さないフェニックスとの契約だ。
このことについて管理局の上層部は誰一人として良い顔をしないだろう。
真っ赤な炎が二人を包み込み、大きな火柱となる。その光景はまるで山の神事や護摩木供養のようだ。
炎は次第に渦を巻き、周囲の気温を一気に上昇させた。
あとは、本人次第だ。
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