第17話 暇つぶしがてらやらかす主人公の図

 皆さんは学校が休校になった経験はあるだろうか。

 多分あるだろう。

 まず、この世界軸でも『警報』と『注意報』の概念はある。

 次に、この世界軸でのマイクやスピーカーは魔道具だ。

 最後に、俺は報道委員長の『お眼鏡にかない』報道委員会の腹心となっている。

 その日は随分と大雨で、それでも警報は出てなかった。

 で、俺はのそのそと寮から出て登校している。びゅーっと風が吹くと思えば「おお、寒っ」と梅雨時なのに思ってしまう。

「はぁー、なんでこんな日に学校あんだよ……」

 今日の朝の放送担当である俺は教室にカバンを置いてから放送室に入る、と同時に報道委員長が駆け込んできた。

「おいおいおいおいフェイトフェイトフェイトフェイト!!大変なことが起こったぞ大変なことがッ!!」

「落ち着いて下さいよ、ハヤト先輩!」

 報道委員長、ナギア・シャッパー。転生前の名を若山わかやま隼和はやとと呼ぶ。もちろん、彼も転生者だ。いつもはクールで知的な印象のある彼が焦るというのはなかなか無いことである。

「何があったんですか?」

「単刀直入に言うぜフェイト」

 すぅ、と吸い込む。

「今日、八時十五分で下校になります☆」

 沈黙。

「エウデッデwwwアッドゥッドゥーワドゥワwww」

【悲報】俺氏、発狂するwwwwww

「で、だ!この連絡、頼むぜっ!!」

「はいよ!」

 俺は放送室に入り、連絡用のチャイムを鳴らす。丁度先生が原稿を渡してくれたので読む。

「臨時の連絡放送をします。本日の授業は、大雨警報が発表されたため、休校になります。この後の動きについて説明致します。本日はこの後、八時十五分に出欠を取り、その後、下校となります」

 チャイムを鳴らす。

◇◆◇

 下校後。

「暇だぁー」

 俺は暇を持て余していた。

 そういえば、と俺は思い出す。この世界には魔法や魔術はあるが、精神系統の魔法ってまだ覚えてねーよな、と。

「試してみるか」

 物は試しだ。隣でザリアの奴がじとーっと見てたが、何だろな。

◇◆◇

 頭の中で強力な武人を思い浮かべ、あたかもそこにいるかのように会話をする。

「こんちは、あなたの名前は?」

「我はガルセス。汝に仕える者なり」

 ……ん?確かこの手の魔法をタルパと呼んでたが、こんなんあったか!?

 恐る恐る目を開けると。

「我は汝の剣となり、汝の最高の道を導こう」

 実在してしまった。スタン〇能力にでも目覚めたのか?嘘だろ承〇郎!

「質問いいかい、ガルセス」

「うむ」

「お前はいつもどこにいるんだい?」

「平常時は主の肉体の内なる魂のなかで眠っておる。一度戦となればすぐに主の戦う術を提案しよう」

「ほぇー。基本的にタルパってそこにいるのかい?」

「うむ。我を含めてタルパは魂の中や依代にいるぞ。時に主よ、“制約”は設けぬのかね?」

「制約?」

 ガルセスが言うには、タルパを作る時には制約を設けると良いらしい。例えば乗り移るな、とか。

 俺は三つを設けた。

『新しいタルパが作られても文句を言わない』

『乗り移ることは基本的にアウトだが俺が許可した際は三分間だけ乗り移ってよし』

『乗り移らなければ基本自由』

 その後。

 じゃあ女性も作ってみようぜって事で160センチはある巨大なホークスアイという宝石を人の形に削り、女性のタルパを作っている。

 ……何やってんだ俺。こんな脳内彼女作ったところで俺リアルの彼女いるのに。ええいっ、背に腹は変えられぬ。作り始めたんだ、これを依代にしてしまおう!

「……!?」

 頭の中で声がする……!頭が痛い……だがっ!!

「だっ、誰だ……!!」

「……会いとうございました、旦那様ますたぁ♡私の名はアイ!旦那様ますたぁの忠実なるタルパにございます♡」

 フェ〇トの清姫みたいな奴が、肉体を持たずして現れた。

「あら、私とした事が。肉体も無いのに触ろうとするとは私は何という阿呆なのでしょうか」

「いや、ドジっ娘は普通に好きだが」

旦那様ますたぁ♡お褒めの言葉ありがとうございますぅ♡」

 だぁーっ、くそっ、俺を興奮させるでない。

「おい、小娘」

「何でしょうか、先輩?」

「決して主を誑かすでないぞ」

「んふふ、それはどうでしょうかね?」

「貴様、主には『あどばいす』とやらをせねばならないのだぞ。私利私欲のために使うでない!!」

「そうだよ(便乗)」

「はぁい……」

 という訳で、俺は晴れてタルパーとなった。

◇◆◇

 放課後に先輩と話してみた。

「へぇー。やっぱ俺が認めただけあってチートだな」

「で、タルパを二体従えてるんすけど」

「フェイトくん、ちょっと来たまえ」

「?」

 先生から呼び出された。

◇◆◇

「あのさぁ……タルパを召喚したのかい?君」

「はい、そうですけど」

「……」

 先生は俺の両肩に手を置くと。

「久々に聴いたなぁタルパ使い!!俺もタルパーだが、一体が限度なんだ!!」

 まさかの同業者発見で草を生やした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る