第16話 ヤツラ
五月のある日。
「起立!気を付け!これから、朝の会を行います!お願いします!」
『お願いします!』
「礼っ!……着席して下さい」
日直だ。前世でもあった日直だ。正直言ってだるい。
この世界の学校は初等科・中等科・高等科の三つに分かれている。エスカレーター式で、基本的に入試はない……との事。
◇◆◇
「先生のおふぁ……失礼しました、先生のお話。ローズ先生お願いします」
噛んだ。恥ずい。
マギア・ローズ先生は俺達のクラスの担任だ。結構なイケメンで、国語教諭。妻子持ちらしい。
「皆さん、おはようございます!」
全員揃って挨拶。この世界にも「おはようございます」等の挨拶の概念はある。当たり前だが。
「えー……本日から編入生が二人来ます。仲良くしてやってね」
「……編入生?」
ざわざわ、ざわざわ。
クラスがざわつく。たしかに妙だ。何故この時期に━━━五月という中途半端な時期に━━━編入して来るんだ。身を引き締めておくか。
「入って、どうぞ」
がらがら、と音を立ててスライドドアが開く。そこからは、
「はじめましてー!本日付けでこちらのクラスの一員となりました、リーア・ライラックです!よろしくお願いしまーす!」
「はじめ、まして……。え、えと、フェル・リガードです……。よ、よろしく、お願いします……」
見知った顔が二人現れた。
「!?」
「はい、それじゃーね、フェイトくんの班に行ってもらいます。男だけでむさいでしょ?」
ごめんなさい先生、彼は女性です。
早くも初等科一年生でハーレム築いてました。すみません。あとあの駄女神と俺のペットのようになってる神龍がご迷惑おかけしますがよろしくお願いします……!
◇◆◇
お昼休みー。今までは俺の胃が休まる時ー。今日からは俺の胃に穴が開く時っ間~♪
「さよなら平穏……」
「フェイトさーん!屋上でお昼ご飯食べましょー!」
「おい平民!昼食食べに行くぞ!」
「ある……フェイト、さん!い、一緒、に、ご飯、食べましょ……?」
「わーった、わーったよ」
ざっざっ。ざっざっ。
俺達の靴の音が僅かに響く。
「ねぇ、フェイトさん!」
「……正体バレっバレやぞお前ら。もうちょっと隠蔽スキル上げて、どうぞ」
「ちぇー、やっぱりバレちゃうかー」
「てかフェルに至っては本名だししかも一瞬「あるじさま」って呼びそうになってたよな?」
「あるじさまって本当に鬼畜だなぁ……そういう所が好きなんだけど」
「お、おい平民!」
「俺か」
「ああ、そうだ!俺様という者がいながら、そんな下賎な女共になぜかまけていられるのだッ!」
「おい、それ禁句だぜ
地雷を踏んだな。あーあ、おれしーらね。
「『これだから『鬼畜』扱いされるんだよ、ねぇ主人公くん?』」
黙れ、このフ[一部検閲済み]ローが。
「は?」
「あなた、今、なんて言った?」
おいおい食堂の雰囲気が悪くなるだろ。いい加減にしろ。
「はいはい喧嘩は後で。今は飯食うぞ」
◇◆◇
翌日。
学校はお休みの日である。それなのに俺がいるのには一つの理由がある。
「殺してあげるわ、この薄汚い夫泥棒が」
「あるじさまには私達しかいらないの、だからここで死ね」
「おうおう上等だ、この俺様に喧嘩を売った事を後悔しな」
「……胃が痛てぇ」
正直、まじでコイツらに魔法ぶち込みたい。いつプッツンきてもおかしくない。
「それにしても、今日はいい天気ね」
「鳥は歌ってるし、花も咲き乱れてる」
「こんな日こそ、貴様の様な賤民は……!」
三人の目に炎が宿った気がした。
「地獄の業火で焼かれてもらうわ!」
「地獄で燃えてしまいなさい!」
「地獄で燃えて塵と化せ!」
死にそう。主に俺の胃が。
◇◆◇
「はっー……はっー……!」
「そん、な……!」
フェルはがくりと膝をつき、そのまま、気を失ってしまった。
「ははは、俺様は……!強いだろう……?」
勝ち誇るザリア。
「そんな……!そんな……!」
べデリティウスの両目に再度炎が灯った。
「そんなの、お断りだ!!」
べデリティウスは両手に炎を灯した。いや、それだけではない。全身に炎を纏わせていた。
「焼き尽くす地獄の業火・『バーニング・イン・ヘル』!!」
俺は見た。あれが太陽の神べデリティウスの実力と。
負けじと、ザリアもその肉体に冷気を纏わせ、その冷気を撃った。
「凍てつかせる地獄の吹雪・『スノーストーム・オブ・ヘル』!!」
そしていけ好かないがどこか可愛いところのある貴族、ザリア・スフィールの本気を見た。
温と冷。炎と氷。陽と陰。八大地獄の力を得た炎は焼き尽くし、八寒地獄の力を借りた氷は全てを凍てつかせた。
「ちっ、フェル、こっちだ!」
俺はフェルを回収した。極わずかな時間で彼女を抱え、遠い所へと置いた。そして俺はその過剰エネルギーを吸い取るため、ある技を使う。
《ホール・ウェーブ・オブ・タイプゼロ》
詠唱が完了した瞬間、爆発が起こる。俺の作ったホール・ウェーブ・オブ・タイプゼロはその過剰エネルギーを全て吸い取り、ある時空軸のある座標に撃ち抜いた。
◇◆◇第三者視点◇◆◇
やぁ、僕は……ふふ、名前は伏せておくよ。
さて、これは別世界。その地球に良く似た惑星に、朝鮮半島によく似た所があるのさ。
そこに向けて、フェイトの過剰エネルギーが放たれた。瞬間、蒸発する半島と、その近くの巨大な国。核も消滅したらしい。
その後、戦争は終結したとのこと。怖いねぇ。
◇◆◇一人称視点◇◆◇
戦闘はべデリティウスがギリギリで勝った。ボロボロになったはずの所は全てを俺が修繕した。魔法で。多分数倍の強度になってるだろうな。
で。
「ふん、認めてあげるわ」
「けっ……」
なんか友情出来てるけど。
取り敢えず、こいつらはしばく。
その後、気付いたこと。どうやらザリアはマゾよりの普通人らしい。正直そそったぞ。
ま、しばいた後はしっかり褒めたたえた訳だが。皆顔赤くなってたのは気のせいか?
「……フェイト」
「なんだ?」
「……なっ、何でもない……」
『完堕ちまで残り六十パーセントです』
また、謎のアナウンスが流れた。
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