第3話 悪党に制裁を

 澄み渡る空。鳥は歌い、花は咲く。そんな、平和な一日は。

「ひゃぁーははは!!」

 唐突に、破られた。

 理由は単純明快。俺の家に、盗賊が入って来たからだ。しかも、何人も。母さんは魔法で昏倒させ、父さんは剣で薙ぎ倒していた。そして俺は魔法とパンチで震えながら闘っていた。確かに雑魚は皆倒せた。が……。

「うっ!?」

「アミラ!!」

「母さん!!」

 母さんが、盗賊のヘッドにやられた。

「二人とも、逃げて!」

「駄目だ!オレは君を見捨てられないんだ!」

「そうだよ!母さんは守る!いつも魔法を教えてくれてる母さんが死んだら……!いつも優しい母さんが死んじゃったら……!!」

「お涙頂戴なみだちょうだいの茶番劇は苦手なタチでねぇ!!そんなに一緒に居てぇんならよぉ!!親子3人仲好く死ねぇ!!」

 不味い。これは不味い。……殺るか殺られるかなら、俺は殺られる側なのか?そんな馬鹿な事を考えた。

「あーっはっはっは!!」

 男の豪腕が迫る。お前ボクシングやれ、と心の中で毒を吐く。……俺死ぬのかよ。第3話は死ぬって定めかよ。虚淵まど〇ギの脚本にゃなりたくない。死にたくない。

「死んで……たまるかぁぁあ!!」

「「フェイト!!」」

「あ!?なんだクソガキ!!」

 男の豪腕をしゃがんで避ける。無意識に。まるで神経が覚えてる様に。……神経が覚えてる?

「そうか!俺には……!!」

 俺には……。

極真空手最強の武道がある!!」

「はぁ!?何わけわからねー事言ってんだ!!殺してやらァァァ!!」

 両の拳を軽く握る、足の付近に力を込める、そして空気を取り込んで、両眼をカッと見開いた、と同時に男が右ストレートを放って来る。俺はサッと外受けを行う。相手の重心が外れる、刹那。

「しゅっ」

 右の正拳突きが男の肋骨を打つ。男の顔が苦痛に歪んだ、が次の瞬間さきほど払った男の豪腕が俺の顔を狙い打とうとする。縦回転の動きだ。落ち着き払って上段受じょうだんうけをする。頭上で鈍い音がした。相手の豪腕は俺の前腕ぜんわんで止まり、やがてみしりという嫌な音が響く。すると、男の腕は曲がってはならない方向へと曲がった。

「地獄で燃える覚悟はいいか!」

 相手の顔はガラ空きだ。脚力増加魔法きゃくりょくぞうかまほうを掛け、相手の顔近くへ飛ぶ。そして、相手の顔へ膝蹴りを放つ!!

「このガキぃ……!ぐぶぁはっ!!」

「……上段膝蹴り一本」

 ……勝負あり、だな。魔法を解除した。見れば家の中は気を失った盗賊でいっぱいだ。

「……too much.やりすぎたな、俺……」

 勧善懲悪かんぜんちょうあく、と言いたいっちゃ言いたい。悪党に制裁を下せた。後は、こいつらを縛ってからか。

 前世のストレスをここで発散したのか?と自分に聞いても、さぁとしか答えられなかった。とんだ自問自答だったな。

◇◆◇

「よし、これで全員か……」

 盗賊団を縄で縛り上げ、表に出した。はぁー……疲れた……。パトロール中の憲兵けんぺいさんにそいつらを引き渡す。周りの目がギョッとしてたけど……?いったいなんだ?

◇◆◇

「……!?」

 さてさて翌朝。ポストに瓦版かわらばんが入っている。読んだ時、俺はでらとてもたまげた。その瓦版にはこういった内容があった。

 『あのマーダー盗賊団、遂に逮捕か!?』

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