第2話「通過儀礼」

広く長く続き、そして暗い下水道の出口を

探すべく、シレンが光がある方向へ

移動を始め数分経った頃


シレン「それにしても気味が悪いな、さっさと外に出た……ッ!?」


ブツブツと愚痴を零しながら

移動していたシレンは

何かにつまづき転んでしまった


シレン「……痛い」


新たに増えた擦り傷の痛みと

転んでしまった事の恥ずかしさが

混じり、何とも言えぬ気持ちのまま

シレンは自分がつまづいた物に目をやる

刹那、シレンの表情が強ばる


シレン「死体だ…何故下水道に

酷く欠損してるし、それに……」


そこにあったのは、人の形をした何かだった

形状こそは人の腐乱死体に酷似しているが

死体には獣の様な毛が点々と生えていたり

顎や手の骨格が酷く歪んでいたりと

人ではない物を連想させる様な物だった


シレン「これは人なのか…?

いずれにせよ嫌な予感がする」


そう言うと、直ぐに起き上がり

服の汚れを払い、その腐乱死体に背を向け

足早に出発しようとした、その瞬間


『パキッ…パキパキ……』

シレンの背後から小気味よい音がした


シレン「今のは何だ…?」

シレンは、声だけは落ち着いている


シレン「何だ、何なんだ…?」

しかし、足は小刻みに震えていて

恐怖心を感じているのは確かだった


シレン「……。」

自分に言い聞かせる言葉を

何か一つ吐く前にシレンは行動を開始した

踵を返し、光がある方に走り出そうとする


『バキ…メキメキッ』

最初の音より大きく、ハッキリとした音


シレン「お次は何だって言うんだ!!」

半ばヤケクソで声を張り上げ

振り向いたシレンの眼に映ったのは

先程の倒れていた筈の腐乱死体だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生者には光を、死者には陰を。 槍歌 @YariChang

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ