生者には光を、死者には陰を。

槍歌

第1話「目覚め」

雫が落ちる音が決まったリズムで鳴り響き

生暖かくジメジメとした風が吹いていた

くぐもった空洞音が反響し通り抜けていく


そんな劣悪と言える環境の中で

倒れていた男は目を覚ます。



肌には貼り付く様な生暖かい風を感じる

身体の節々には火照る様な鈍痛を感じた

呼吸をすれば噎せ返る様な悪臭を感じた

右手、左手、右足、とゆっくり一つ一つ

確認するかの様に動かしていき

そしてひとしきり、確認が終わった後

起き上がり、口を開いた


シレン「・・・身体が痛い

いや、それより何処なんだ此処?」


彼には、身体に幾つもの生傷が有ったが

この程度、と特には気にかけず

まずは、周囲の状況を知ろうとした。


シレン「此処は地下…かな

大きな下水道か何かだろうか。」


まだ、暗所に慣れていなかった眼には

これ以上の情報を引き出すのは困難だった


シレン「兎に角、此処には居られないな」


やがて、眼が暗所に慣れ始めてきた頃

ややフラついた足取りでゆっくりと駆け出し

彼は下水道の光がある方向を目指し始めた。


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