第6話 暴言カレンダー制作秘話 殺村さんと仲良くなろう! お出掛け編(前編)
暴言カレンダープロジェクトが開始されて気がつけばもう十日が経っていた。
九月も半ばだとういうのにまだまだ真夏のような陽気が続いている。
確かに夏服のセーラー服は確かにブラジャーがよく透ける。しかし。アレはなんとなくじっくり見ることに罪悪感がある。やはり僕はどちらかといえばカーディガンやコートを着てもこもことしている感じの方が好きだ。したがって早く涼しくなって欲しい。
……そんなことはいいとして。
本日は部長の発熱が学校に来られるレベル(三八・九℃)であるということで会議を行うことにした。場所はもちろん部室。
「大分増えたじゃないか」部長がデータベースを見ながら発言する。
「ええ! 頑張りましたから!」
春日さんは誇らしげに腰に手を当てている。千代美先輩もそこはかとなくドヤ顔である。
「しかし」部長が眉をしかめながら画面をスクロールさせる。「少々もの足りない部分があるな。もう少しバリエーションが欲しい」
「おめーは偉そうなんだよ! あたしらがどんだけ苦労したと思ってんだ! 殺すぞ!」
千代美先輩が瞬間湯沸かし器のようなスピードでキレる。
「まあまあ。確かにエラそうですが。おっしゃることはごもっともです」
「火野くん。キミもなかなかトゲがあることを言うね……」
「もう少しプレミア感のある暴言も欲しい気がします。なんと申しますかこう、このシチュエーションじゃないと絶対に出てこない暴言的な」
あまり考えがまとまっていないがとりあえず発言してみる。
「シチュエーションですか。確かにそういう意味ではバリエーションは少ないかもしれませんね」春日さんがアゴに手を当てて思案する。
「んなこと言ったって、学生生活にそんな色んなシチュエーションなんてねーだろうよ」
「ごもっともです。行事などがあれば別ですが、文化祭まではなんにもないですし」
四人、全く同じ腕を組んで首を傾げるポーズで考え込む。
最近どうもあんまり一緒にいすぎて動作のパターンが似てきてしまった。
――夜の十時半。守衛さんに追い出されてしまったので学校を出た。考えはまとまらないままだ。春日さんと二人。夜道を歩きながら引き続き思考をめぐらせる。
「火野くん。なにかいい手ありますかね」
「うーむ……難しいですね」
普段小説の構想を練るときなどは歩きながら考えるとよい発想が出ることが多いが、どうも脳味噌が疲れているようであまりよいアイディアは浮かばない。
「そういえば。春日さんがおっしゃっていた『マシンガンシャウト・ライク・ア・スコール』もまだ繰り出されておりませんね」
「どうやったらご披露頂けるのでしょうか?」
などと話している内に『マチダ想い出銀座 KANAGAWA』というアーケードの入口まで到着した。ここからは川沿いの道を歩いて僕の家まで十五分程度。
「ねえ火野くん」春日さんは立ち止まりポンポンとお腹を叩いた。「私お腹空いちゃった。軽く食べて行こうと思うんですけど、火野くんはどうします?」
「えっ!?」
確かに僕とて大変お腹は空いている。しかし。
「ご一緒したいのですが、ちょっと持ち合わせが……」
財布を振って中の一円玉三枚を取り出してみせる。春日さんはクスっと笑った。
「貸しますよ。それくらい」
「よろしいのでしょうか? 申し訳なさすぎて……」
「殺村さんなら『このゴクツブシ! ヒモ野郎! 低額納税者!』って言うかもしれないですけどね」
「あ、それ結構感じが出てます」
春日さんは「上達しましたかね?」などとピースサインを出してみせる。
正直申し上げて少々興奮した。このままドンドンと腕を上げて頂きたいものだ。
アーケードの入り口付近のドエムドナルドに入店した。
何度か家族でディナーに来たことがあるので、注文の手順などに問題はない。無事オールもやしセット(一五〇円)を購入し二人で席に着く。
「なんだか新鮮ですね。いっしょにドエムド来るなんて」
春日さんが生クリームどら焼きバーガーの包装紙を開きながら穏やかな表情でつぶやく。
「そ、そうですね。ナニゲに初めてではないでしょうか」
「あー。そういえばそうかも」
「ドエムドナルドに来るのがと申しますか。えーっと……こういった店舗でご一緒に外食的なことをさせて頂くこと自体が、その、いわゆる、アレではないでしょうか?」
なんとなくうまく言葉が出て来ず、しどろもどろになってしまう。
春日さんは特にいつもと変わった様子はない。リラックスした表情だ。
「それおもしろいですね。ポテトじゃなくてもやしを揚げたスティックですか?」
「そうみたいです。おひとついかがですか?」春日さんに一本を差し出す。
「ふーむ。食感は面白いけど。味はしませんね」彼女は苦笑しながら指をぺろっと舐めた。
――なんだか。場所が違うだけで春日さんが別人のように見えてくる。視線をやや横に逸らし、もやしバーガーを口に運んだ。食感は気持ち良いが味はしない。
「んんん!?」
――突然。春日さんが口を抑えながら驚声を上げた。視線は僕の背後に向かっている。
「どうされました?」
後ろを振り返り彼女の視線の先を追いかける。そこには。よく知っている人物が立っていた。数学担当で二年A組の担任も務める大森先生。いつも殺村さんに罵倒されているウラヤマシイ人だ。
ド派手な花柄の開襟シャツに、グレーのストライプジャケット、ゴツいネックレス、横には綺麗な女の人を連れていた。右手には空のトレイ。店を出る所らしい。
先生は僕たちの姿を確認すると早足でこちらに近づいてきた。
「おめえら」僕のアタマを後ろからアイアンクローの要領で掴んだ。
「ここで見たことは黙っておきやがれ。さもねえと。おまえらの期末試験だけ東大の博士課程レベルの問題になるぞ」
「は、はい! 黙ります!」
大森先生は無言で僕の頭蓋骨を開放。そして去って行った。
「……びっくりした」春日さんがムネに手を当てながら大きく息を吐く。
「あの女性はカノジョでしょうか?」
「だろうねー。それにしてもあの格好! いつもはテキトーなジャージなのに!」
「非常にチャラチャラしていましたね。一回帰宅して着替えられたのでしょうか」
思い出したら笑いがこみ上げてきた。
「やっぱり先生にも学校の外には別の顔があるんだなァ」
「学校の外には別の顔……そういえば。春日さんも今日は少し別人っぽく見えます」
「えっ!? そうですかね。自分じゃよく分からないですけど」
(ん……?)
「これからデートにしに行くんだろうなーいいなー」
なにかが僕のアタマにひっかかり、アイディアのかけらが産まれた。
「もうこんな時間か。火野くん。そろそろ行きます?」
「あのっ!」
ついつい大声を出してしまい、店のお客たちから少し注目が集まる。
「ど、どうしたの?」
「すいません……大きな声を出して。ちょっと聞きたいことがありまして」
「私にですか?」
「はい。春日はその、デートのときどういった所に行かれるのかと思いまして」
「えええええっっっっっ!」
さきほどの僕の声の十倍ほどの音量のシャウトが発せられた。春日さんの顔がみるみる内に茹で蛸状態になっていく。
「ご、ごめんなさい春日さん。これはセクハラに該当しますかね」
「いえ! ちょっとびっくりしただけですので……」
「それならよかったです」
「でも――」春日さんが両手の人さし指をつんつんと合わせながら言った。「その質問には答えられません。なぜならデートなんか行ったことがないからです」
「そうなんですか? 春日なら行かれているかと思ったのですが」
春日さんはクスっと口に手を当てて笑った。
「まさかー。学校にいる間中だいたい火野くんと一緒にいるけど、誰かと特別親しげにしてるところ見たことあります?」
「……確かに」
「でしょ?」そういいながら飲み物のストローに口をつけた。「でも。なんでそんなこと聞くんですか?」
「いえ。カレンダーの件でちょっとアイディアが浮かびまして」
「暴言カレンダーのこと?」
「ええ。あのですね。もし殺村さんをデートに誘ってみたとしたら。それはもう新鮮でレア感に溢れた暴言が採取できるのではと」
それを聞いて春日さんは目を輝かせながらポンと手を叩いた。
「質問を変えてみます。春日さんだったらどこにデートに誘われたいですか」
「そうですね。私だったら。相手が一番好きな場所、その人にとって大事な場所に誘われたいです。そうすれば。その人のことがよくわかるじゃないですか」
「そういうもんですかね」
春日さんはそういうもんだと思います。と答えた。
僕は腕を組んで思案する。
「まあデート行ったこともないヤツの意見が参考になるか分からないですけど」
いえそんなことないです。と回答しつつデート場所について考えを巡らせていると、
「あ、よく考えたら。デート行ったことあるかも」
春日さんがポツリと呟いた。どこにですか? と尋ねると彼女は床を指さした。
「今のこの状況って一応デートかなって」
僕は恥ずかしくなって九十度ほど首を回転させて目を逸らす。
その反応がおかしかったらしく、彼女は口に手を当てながらケラケラと笑った。
やっぱりなんだかいつもと少し違う。気がする。
それからもう一週間が経過してしまった。
「全くヘタレ野郎だなあ。ビャーってお嬢ン所行って『殺村! デート行くぞオラ! 舐めんなクソババア!』って言やあいいんだよ!」
「僕一人で地獄に行かされるパターンですよソレは」
木曜日の昼休み。部室にてみんなで作戦会議昼食会を行っている。(ただし部長は吐血が一リットルを超えたため、ドクターストップがかかって欠席)まだ殺村さんをデートに誘えていないことを報告した所、千代美先輩に怒られてしまった。
「先輩は誘われるとしたらどこがいいですか?」
「あたしか? そうだなークソ暑ちいからプールとか行きてえな」
「いいですね」
「また四人で遊びに行くか。去年、合宿費使い込んで遊園地行ったときは楽しかったな」
千代美先輩が珍しく穏やかに頬をゆるませる。
「ええ。まったく。特にオバケ屋敷ですね。楽しそうに叫ぶ春日さんと、真剣に脅えきって顔真っ青にしてガタガタ震えている千代美先輩の対比が最高でした」
千代美先輩の強烈なデコピンが僕の頭蓋骨に突き刺さった。
「プールかぁ……水着が恥ずかしいから私は……」
春日さんは顔を赤くして下を向いてしまった。
「ええなんで? ガキじゃあるまいし」
「水着がといいますか……正確には胸が小さいのが恥ずかしくて」
僕は思わず彼女の制服の胸の辺りを凝視。確かに膨らみらしい膨らみは確認できない。
「別にいいじゃねえか。ムネで人間の価値なんか決まらんぜ」
なかなかの良乳を誇る千代美先輩はためいき交じりに言った。
「そんなことありません! おっぱいが全てです! 貧乳は恥です! 負け犬です! ノンステータスです!」
机を叩き力説する。千代美先輩と顔を見合わせ、両手を広げてやれやれのポーズ。
「ま、いずれにしても。また今度かな。いまちょっと弟の千代介の修学旅行の費用やらなんやらで金欠だから」
千代美先輩がカバンからスーパーの袋を取り出す。
「ソレなんですか? ハッカのアメ?」
春日さんが先輩のお昼ご飯に疑問を呈した。
「牛脂ですよね?」「そうだよ」「ええっ!?」「金欠の時の定番ですよね。ウチの妹も牛脂料理が得意で」「へー今度教えてくれって言っといてくれ」「だ、大丈夫なんですかねソレ?」「うまいぜ」「いや健康的なイミでですね……」
僕も弁当箱を開く。
「今日はパン食かあ」
「おお。それも金欠の時の定番だよな。弟の千代彦の好物だわ」
『スイート・イヤー・ミュージック』サンドイッチ屋さんから横流しして貰ったパンの耳に砂糖をかけ、霧吹きで湿らせたもの。わが妹カスミの女子力が爆発した創作スイーツだ。
「ナニゲに美味しそうですね」
春日さんも弁当箱を開く。すると香ばしい香りが部室全体を包んだ。弁当箱狭しと詰め込まれている茶色い物体に目を奪われる。鶏のもも肉に衣をつけて揚げたこの世で最も贅沢な料理のひとつ。いわゆる若鶏の唐揚げである。
「うわあ。フツーにうまそうじゃねーか」
「そうですね。匂いだけでご飯二、三杯いけるレベルです」
「よかったらおひとついかがですか? ちょっと私には多いので」
春日さんの顔が聖母に見えてくる。こんなに徳を積んでいる女子高生が他にいるだろうか。いやいるわけない。死んだら極楽浄土に直行だ。間違いなく。
「はいどうぞ」
箸で唐揚げを掴み僕の顔の前に運ぼうとする。
「あっ……いや。じ、自分で取って下さい!」
その箸を降ろし、弁当箱と一緒に僕の前にスライドさせた。
少し残念に思いつつ箸を手に取る。弁当箱の中をよく見ると、一口に唐揚げといっても結構大きさにバラつきがあるようだ。
(ど、どれを取るか)
春日さんがじっと見つめる中、僕はあろうことか一番大きいものを箸に取った。
「美味しいですか?」
にっこりと目尻を下げ問いかけてくる。怒っている様子はない。たぶん。
「は、はい! ものすごく美味しいです! これはただの唐揚げではないですね! スパイスが絶妙に効いていて、味にキレがあります!」
千代美先輩も唐揚げをヒョイっと摘み上げる。
「ウメエ! これ弟の千代也が絶対好きな奴!」
ちなみに千代美先輩の弟はどうやら十人ぐらいいるらしい。それゆえの面倒見の良さをときおり垣間見ることができる。
「あの……火野くん。ずうずうしいのですが。その『スイート・イヤー・ミュージック』ひとつだけ頂いてもいいですか? 食べてみたいな」
もちろん快諾する。一本を手に取り春日さんの口にあーんと運んであげた。
「ま、ともかく! 今日こそちゃんと誘えよ! 誘わなかったら根性焼きするからな!」
非常に気が重い。さてどうしたものか。腕を組んで思案する。
「んー! おいしい! 素朴な味わいでいいですねー」
春日さんは大変幸せそうにパンの耳を食していた。
昼食後。五時間目の授業は数学。インネンの大森先生の授業だ。彼はいつも通り無精髭を生やしてテキトウなジャージ姿で教室に現れた。
「テスト返すぞー。前にも言ったが赤点取ったヤツは今日補修と追試だからな」
一週間前に行った実力テストの答案が返却されていく。
「次―春日―」「はい」
春日さんが答案を持って帰って来る。席についた彼女に(どうでしたか?)と耳打ちする。照れくさそうに(ナイショですよ)と言いながら答案を見せてくれた。
九十六点。相変らず優秀だ。普段は仲間だが勉学面では少しばかりライバル視している。ただし勝ったことはない。一度くらい彼女の点数を上回ってみたいものだ。
「次―火野―」「はい!」
大森先生から答案が渡された。点数が書いてある部分を指で隠し、徐々に左にスライドさせていく。一桁目の数字は『7』。
(これは! もしかすると!)
ゴクリと喉を鳴らし二桁目の数字を確認する。
二桁目の数字は――『1』。
(なんだと!? バカな!)
解答用紙は見事に『×』だらけ。
はっきり言って。僕はこの学園において劣等生のレッテルを貼られている。暗記だけでどうにかなる科目はともかく他はまったくダメ。勉強は自分なりに頑張っているつもりなのになぜだろう。やはり頭脳がお猿サン並、脳味噌の八十五パーセントがババロアなのか。
呆然自失として席に戻る僕の背中に先生が追い討ちをかける。
「いいかー補修を受けるのはこの二人のバカだ!」
(やめろ! やめてくれ!)
黒板に巨大な文字が書かれる。
火野蛍 十七点!
殺村あやめ 七点!
――実は。劣等生のレッテルを貼られているのは殺村さんも同じだ。頭の回転が速いイコール勉強ができるではないという好例であろう。それゆえ授業中に回答者として指名されるたびに暴言を吐いているというわけだ。なかんずく数学が苦手であるため、大森先生は彼女の宿敵とされている。
「以上二名は本日家に帰れませーん! なんでてめえら二人、見た目は優等生なのにこんなにもバカなんだ!」
教室内大爆笑。僕は天使になって窓から飛び出したいという衝動にかられた。殺村さんも机に突っ伏して「これは夢だ……これは夢だ……」などと念仏を唱えている。
春日さんがひきつった顔でこちらを振り返り、耳打ちをした。
「ま、まあでも。デートに誘うには絶好の機会じゃないです、か?」
優しさがグサリと胸に刺さった。
放課後。
夕陽が照らす教室に殺村さんと僕と大森先生の三人。
日頃のオカエシとばかりに、さんざん罵倒されながら一時間ばかりの補修を受けたのち、現在は追試験の答案用紙と格闘している。
補修の甲斐もあってなんとか合格点は取れそうなのだが、それとは別に教室前方のドアから春日さんと千代美先輩が覗いているのが大変気になる。
「ちょっとクソしてくるわあ。カンニングなんてすんなよ。まあおまえらバカなだけじゃなくてバカ正直だから大丈夫だと思うけどな!」
大森先生は実に上機嫌。ガハハと笑いながら後方のドアから教室を出て行った。
教室前方を見ると、春日さんと千代美先輩がモロに顔を出している。
(い・ま・で・す!)
春日さんが口パクで応援してくれる。千代美先輩も野球の三塁コーチのようにグルグル腕を回しGOサインを出している。
(ちくしょう! 行くしかねえ!)
「殺村さん!」
光と同じスピードで殺村さんの席の前に移動する。彼女はうつろな目で顔を上げた。
「なんですの? カンニングの相談? 無駄ですわ。私達みたいな脳ミソの主成分がババロアのクソ虫同士が協力した所でクソ+クソはクソですわ」
(殺村さんの自虐! これは珍しい! とてもよい! ……いや。今はそれどころじゃない!)
僕は殺村さんの前の席の机上に立った! 机から飛び上がり、前方宙返りをしながら床に降下! アタマを床に擦り付ける! 『シューティングスター土下座』! 春日さんのムーンサルト土下座を応用したワザだ!
「僕とデートして下さい!」
顔を上げ学校中に響かせるつもりで叫んだ。
額からは流血。アゴを伝わって床にポタリと落ちる。
殺村さんはしばしの沈黙の後、溜息混じりに苦言を呈した。
「あなたといい、春日さんといい。本屋部マザーファッカーズはするいですわ。人にモノを頼むとき、断ったらサツガイする目をするんですもの」
「そ、そんなつもりは! 断られた場合は自分自身を殺します! 殺村さんには手を出しません!」
「それはそれでタチが悪いですわ!」
彼女はもう一度深い溜息をついてから、ヤケクソのように叫んだ。
「わかりました! 付き合えばいいんでしょう!」
僕はイヤオォ! などと叫びながらガッツポーズ。天に向かって拳をかざした。
「……ホントに変な人。それで? どこに連れていこうっていうの?」
「ええとですね。待ち合わせ場所は――」
「とりあえずそのオデコから垂れているヤツ拭いて。フツーに怖いですわ」
おこがましくも殺村さんからハンカチを借り、そいつで額の血をぬぐった。
チラっと後ろを振り返ってみると。
千代美先輩はニカっと歯を見せ親指を立てていた。
春日さんは。なんだか複雑な表情を浮かべているように僕には見えた。
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