第3回カクヨムWeb小説コンテスト編
1.『二つの世界の螺旋カノン』著:バター猫 ジャンル:SF
※本稿は『11-02 なんだかSFじみてきただろう?』迄を読んだうえで書かれた物です。
思い付きで企画を始めてみたは良い物の、流石に数話読んだだけで「あ、大丈夫っす……」ってなる作品の感想なんぞ書いても仕方が無い。どうせならば最後まで、少なくとも八割以上は読み進める気力の起きる作品がいい。そういえば今はカクヨムコンの期間中なのだし、折角だからその参加作品から選ぶのが良いんじゃないだろうか。
そんな事をぼんやりと考えながら、作品のタイトルやあらすじ、時には最初の数話を読んではブラウザバックをし続けてようやくたどり着いたのが本作。記念すべき(と言って良いのかは不明)最初の一作目で良い物に巡り合えたのは運が良かったと言えるんじゃないだろうか。
で、本作。タイトルもそうなんだけど、概要をざっと読んで「あ、これは良さそう」ってピンときた作品。自分が作品評価に置いて「彼が評価しているのならば、例え自分が微妙だと思っても、その評価を捻じ曲げてでも読むべきだ」と思っている友人は「あらすじだけじゃなんとも言えない」というのだが、自分はそうは思わない。
基本的に力の有る作品、また作品そのものは未熟でも、作者そのものが決して他にはない才能を持っている場合、「あらすじ」や「謳い文句」の様な物は、独特のオーラみたいなものが有る、そう信じている。
本題に戻ろう。本作はそういう何となくの「あ、良さそう」という雰囲気を醸し出している作品だった。一番それを感じたのは謳い文句だろうか。短い文字列に強い意味を込められる人は何時だって強い。そんな気がする。
作品自体の内容は概ね概要の通りである。オカルトと言えばオカルトだし、実際に現実にも存在するオカルト的な話や都市伝説も取り扱っている。ただ、作品そのものの動きというか、全体的な雰囲気はジャンル分け通りSFとして捉えるのが妥当だと思う。正直な所、自分の様な素人からすると、ざっくり似たようなジャンルにぶち込まれている一連の事象ではあるのだけど。
そんな本作。個人的に強く思いだしたのはやっぱりシュタゲかなぁ。『STEINS;GATE』。あれも非常に良く出来た作品で、この手の世界観が好きならばきっと気に入る作品だとは思うのだけど、アレの「特に上手い部分」。それと似たようなテクニックというか世界観が上手く表現されてる。そんな気がするんだよね。
アレはまあ、もう知ってる人も多いと思うから書いちゃうけど「タイムリープ/タイムマシン」の話。こちらは「他世界解釈」の話。どちらも現代社会においては実現していないし、存在の証明もされていない。言ってしまえば「存在しないはずの事態」。それが間近に起きた時の人間の反応とか、対応。そういう物が凄く綺麗に描かれてるっていう所が近いかなぁと。
一つ違うのは「明確な敵」がいない事かな。別に必要ないって言われればそれまでだし、構造上なんの問題もないとは思うんだけど、やっぱり何だかんだ「敵」と「戦う」ってシチュエーションを人は求めてる。そんな気がしないでもない。完全に思い付き。
後、気になったのが二点。どちらも「駄目」という話じゃないんだけど。
一つは話の展開。多分だけど、この作品とかキャラクターとかその辺りを考えた時、もっとぐいっと全体の尺が伸ばせるんじゃないか。ちょっと圧縮されてるんじゃないか。そんな気がした。
ただ、ネット小説って媒体は(個人的には凄く嫌いな風潮だけど)どうしても話がトントン進んで、ブワッーって話が広がる方が好かれるから。読まれる、という意味ではこの構成の方が良いのかもしれない。
もしそういうしがらみ無しでやるのであれば、もっとじっくりとキャラクターとか、舞台とか、諸々についてじっくりと知るスパンがあってもいいかもしれない。そう感じた。
それからもう一つは、「専門用語」。これに関しては僕もフラットな目線で語ってるとは言い難い。と、いうのも、正直な所、本作で語られているオカルト話やSF用語(ほぼ後者の事だけど)っていうのは、こういう話に抵抗こそ無いんだけど、そんなに積極的には触れてこなかった、という人にとっては「初めて聞くよ」という物も多いと思う。そう考えた時に、やっぱりTips的な物が有ったほうが良いのかなぁと、ちょっと思った。
自分は一応他世界解釈とか、その辺りの話が結構好きで、自分でも創作になにか使おうかなとか思いつつ調べた経験があるんだけど、それでも、かみ砕く必要があったから、そういう用語集か、後は、専門的用語の出し方とか解説の仕方をよりかみ砕くと良いのかもしれない。これに関しては自分の視点だけだと不十分だから、もっと色んな人の意見が有ったほうがいいと思うけど。
何だか色々書いたけど、基本的には凄く良く出来ていて、面白いです。この手のちょっと踏み込んだSF知識を前面に出して作品にするっていうのは結構難しくて、分量を間違えるとただただ知識を羅列しただけになっちゃいがち。でも、この作品はそういう事なく書かれていてよかったと思います。
後、あんまり書かなかったけど、キャラクターも、色んな方向を向いた個性の人間が、それぞれきちんと書かれていたんじゃないかなぁと思います。この辺りをより活かすなら、やっぱバッと尺を広げるのが一番、何だろうか。
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