第5話 国際連合軍


 飛行機から降り立つと、冷たい北風が肌に触れ、寒さのあまり、仁は思わず体がすくんだ。


 3月とはいえ、ロシアにほど近い場所であったため、あたりは銀世界だった。ただ、上を見上げると、そんな悠大な自然とは対象的な、巨大な要塞のような構造物がそびえ立っていた。


 ターナーは、落ち着かない様子の仁を見て、「国連軍本部へようこそ。君の入隊を心から、歓迎するよ。」と笑って声をかけた。


 仁は、本部の建物の中に入り、案内される道中、ターナーからさまざまなことを聞かされた。ここが北方領土よりさらに北にある、志沙羅島(シシャラ)という島であること、島自体はロシアの実効支配下ではあったが、一切の無人島であること。そして、国連事務総長が、ロシアとの交渉をせず、独断かつ秘密裏に基地を築きあげたことを仁は知った。


 国際連合軍の存在は、いまだ公表されておらず、加盟国すべての目から隠す必要があった。そのため、千島列島のはずれにあるこの島が基地として選ばれたという。島の面積はおよそ1,000㎢あり、周りが海に囲まれた絶海の孤島であった。


 そんな話に耳を傾けていると、仁とターナーは、大きなホール状の広い空間に出た。中央には受付があり、周りには武器やアイテムを売るお店が立ち並んでいた。


 仁の目には、まるでゲームのような世界に写った。ターナーの説明によると、ここに入隊した者は、陸・海・空のどれかの軍に属し、受付でミッションを受注するシステムにしているようであった。

 そして、次に陸・海・空軍について、それぞれの基地に案内された。

 

まずは、陸軍の基地を案内された。そこには、一国には遠く及ばないが、戦車数台や高射砲といった、大型の物から銃火器といった小型のが格納されていた。ターナーから聞くと、陸軍は他の空軍、海軍に比べ、装備が充実しているとの話だった。そんな光景を見て、仁はただただ目を見張るのみだった。


 一向は、次に海軍の軍港に向かった。空母や戦艦はないものの、小型の巡洋艦や潜水艇が停泊しているのが確認できた。海軍の隊員は最も少ないこともあり、軍港の軍人も少ないように感じた。

 

 そして、最後に空軍の基地に向かった。格納庫には、戦闘機をはじめ、大型の輸送機やヘリコプターなどが格納されていた。仁は、航空ショーやTopGun(トップガン)の影響から、とりわけ戦闘機に詳しかったため、とても興奮した。


 最後に中央のビルに戻り、そこの最上階に着いた。そこには大きな応接室や執務室があった。ターナーによると、ここは国連軍の最高司令官らしい。

 仁はターナーに、司令官が誰なのかを尋ねた。


 ターナーは言う。「国連軍は出来て間もない組織だ。現段階では、全隊員を合わせても500人にも満たない。だが、幹部と司令官は決まっている。」と。

ターナーは続けて、もったいぶるようにして、「そしてその司令官は、今、私の目にいる。」と言った。


 仁は衝撃のあまり、返す言葉が見つからなかった…。



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