第4話決意の日
ターナーとの約束した3日後、仁はターナーからもらった名刺の番号を見て、彼の連絡先に電話した。
ターナーはすぐに出た。
「お前か。そろそろ連絡が来る頃だと思ってた。」「今から、君の家の近くの空き地まで来てくれ。そこで落ち合おう。」と話した。仁は電話が終わるとすぐに、待ち合わせ場所の空き地へ向かった。
待ち合わせ場所に着くと、すでにターナーが待っていた。ターナーは、仁を見るなり、「良い顔つきだ。これは良い返事が聞けそうだ。」とほくそ笑んだ。
それに対し、仁は「まだ、国連軍に入るとは一言も言っていない」と反論しつつも、「国連軍に入れば、俺は報われるのか。」とターナーに尋ねる。
ターナーは答える。「それは君次第だ。だが、君の能力を最大限生かすことができる場所であることは保証しよう。」と。
仁は迷っていた。この男の言う通り、国連軍に入れば、周囲を不幸にせず、幸せに生きていくことが出来るかもしれない。しかし、軍人になる以上、一般人として生きることは不可能だし、一度足を踏み入れば、元の生活に戻ることは出来ないだろうと考えた。
ターナーは、そんな仁の様子を見て、優しい口調で語り掛ける。「君は軍人が自分に向いてないと考えているのだろう。軍人になれと言っても、君に体力馬鹿になれとは言ってない。私が君に期待しているのは、その頭脳と類い稀な勝負強さだ。」と。更に続ける。「ただの体力馬鹿の軍人は、無謀な行動を起こし、遅かれ早かれ命を落とす。君のような能力を持った人間は常に冷静沈着で、勝負強さは勝利をもたらす。そして何より、そういう人間が、どんな過酷な戦場でも必ず最後に生き残る。」と、ターナーは強みを持たせて言った。
仁はしばらく考え、決心して、重い口を開いた。
「入隊するなら、条件がある。それは自分自身の存在を世間から抹消することだ。戸籍を消して、誰からも見つからないようにしたい。」と。
ターナーは、少し驚き、「もともと、国連軍自体が国際機密だから、入隊する者には、一切口外しないように伝えてるが、そこまで自身を消したい理由は何だ。」と聞いた。
仁は、「最近、いろんな人に迷惑をかけてる自分のことが嫌いになった。これ以上、自分自身を嫌いにならないためには、自分が消えるしかないと思った。国連軍に入れば、それが叶うんじゃないかと思う。」と答えた。
ターナーはふと笑いながら、「分かった。俺の力で君を消してやろう。」と話し、「これで契約完了だな。」と仁に手を差し出し、仁も握手した。
仁は、その日の深夜にターナーと出発する約束をし、家に帰り、荷造りを始めた。途中、何度か後ろ髪を引かれるような思いがあったが、一度決めたら最後まで貫くという彼の性分から、国連軍への入隊を辞退しようとは思わなかった。そして、家族が寝静まった後、一通の書き置きを残し、家を出た。
その後、仁はターナーと合流し、故郷に別れを告げ、ターナーの運転する車に乗車し、1番近い空港に到着した。
そこで目にしたのは、ターナーのプライベートジェットだった。改めて、この男の正体に疑問が生じたが、言われるまま、座席に座った。
そこからのことは、あまり覚えてないが、仁が次に、目にしたのは、北海道の広大な大地だった。機体はさらに北上し、北海道より、更に北、オホーツク海に浮かぶ、ある孤島にたどり着いた。
そこは、周りの殺風景な海とは、不釣り合いな摩天楼だった…。
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