第3話 自問自答の日々

 仁は帰宅後、一人、自室にこもると、今日の出来事を振り返った。

ターナーという謎の男…、国際連合軍…、頭の中で浮かんでは、結局は堂々巡りをするだけだった。

これ以上、考えても仕方がないと感じ、その日は眠りについた。


 あくる日、仁は小学校時代からの親友に会いに行った。その親友は、仁を陸上部に誘い、それまでスポーツが苦手で、文化的な趣味しかなかった仁を大きく変えるようなきっかけを作った人物であった。また、勉強面でも、切磋琢磨しあう関係であった。


 仁にとって、彼の存在はかけがえのない存在であり、彼なしでは、今の自分はいなかったと自身で感じるほどだった。仁とその親友は、高校が別々になってしまったものの、お互い陸上を続けていたこともあり、親交は続いていた。


 彼と会うのは、夏休み以来だった。お互い、受験が終わったこともあり、久々の再会だった。

そこで彼から、聞かされたのは受験に失敗したという衝撃的な話だった。その親友は、仁より頭が良く、難関大学を目指しており、仁も彼なら必ず合格すると信じて疑わなかったのである。


 そして、彼は仁に向かって、「仁、お前は普段は勉強も部活も手を抜いて、飄々としているのに、本番では必ず成功している。」「そうやって、普段、自分の実力を偽ることで相手を油断させておいて、本番では一人勝ちして高笑いでもしているのか。」最後に、「お前のそういうところ、昔から気に食わなかった。」と吐き捨てられた。

普段の優しい親友とは異なる態度に、仁はショックを受けた。


 仁は普段から、真面目な努力家だったが、物事の最初は必ずいつも上手くいかなかった。中学も高校も1年生の時は劣等生だった。それ故、仁の性格をよく知らない人には、彼が怠けているように見えた。しかし、2年生の後半から、調子を上げ始め、受験も部活も最後に必ず成功を収めていた。

彼をよく知る友人以外の人間は、彼を尊敬の眼差しを向けるより、やっかみの対象としていた。


 だが、親友であれ、例外ではなかったのである。仁は、親友の一言を聞き、すぐに自宅へ戻った。そして、1日中、自室にこもった。


 次の日、親に昨日、親友から言われたことを話した。

教師をしている仁の母親は「あなたは、自分の実力で合格したのだから、誰に何を言われようと関係ないことじゃない。それが例え親友であっても。」と言われ、また、父親からも「不合格になった親友の分まで、これから第一志望の大学で頑張っていくべきじゃないのか。」と諭された。


 仁も、理屈では他人の目を気にしても仕方がないとは理解していたが、彼のプライドがそれを許さなかった。彼は自分がひとり勝ちすることを何より嫌ったのである。

彼は再び、悩んだ。これからの自分の人生を考えたとき、周りを巻き込んでまで自分の幸せを手にしたいと思うのか。今後、何十年も、こんな思いをしないといけないのか。夜が更け、一人苦悩した仁の目に映ったのは、あのターナーの名刺だった…。

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