融解。
窓の外を覗くと、雨が降っていた。
「あ、」
視界にあの子が映った。
あの子は、雨の中傘も差さずに雨に打たれて空を仰いでいた。
僕は傘を持って、あの子に駆け寄った。
「風邪ひくよ?」
「君は、優しいね」
「そんなことないよ」
ひとつの傘の下で、あの子はただ水たまりを眺める。
沈黙。
すると、徐にこっちを振り向いたあの子と目が合った。
「雨に、溶けられたらいいね」
「溶ける?」
「そう。僕は、雨に溶けて消えられるなら本望だよ」
ふいに、あの子は傘から飛び出した。
なんだか、本当に雨に溶けてしまうようで私はあの子の細い手首をつかんだ。
「あのね、僕ねーーーーーーーーーーーーーーーーー」
つかんだはずの細い手首の感触はなくなって、私の手は空を切る。
泣きながら微笑んだあの子は段々と消えていく。
「ねえ、まって」
ーーーーバイバイ。
‘‘バシャッ‘‘
あの子は水たまりになって、どこの誰なのかもわからない人に踏まれて
壊された。
雨が降るたびに思い出すあの子の涙は雨の色。
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