彼女の還る場所。
「ねえ、海と空で何をイメージする?」
彼女は肩までの黒髪を、風に預けている。
「私はね、雨が降って灰色ってイメージしかないの。」
‘‘かなしいでしょう?‘‘
振り向いた彼女は同意を求めるように黒目がちな二重が僕の眼を捉える。
‘‘かなしくなんてないよ‘‘
とっさに吐き出した言葉は、どうしようもないくらい空っぽなものだった。
「ありがとう」
左えくぼが視界に入る。
つられて僕も口角を上げる。
(あぁ、波の音がうるさい)
‘‘でも、ごめんね‘‘
空気を揺らした7文字。
足元が急に冷たく感じる。
彼女の肩幅が儚くて、頼りなくて。
でも、僕は彼女に触れられないまま。
「待って…!」
僕の声は押し寄せる波の音にかき消され、
彼女は海へ還っていった。
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