解毒。
「みんな死ね、しんじゃえ、」
その言葉を耳にしたあの子は、眼を見開いて私から視線をそらさない。
そして、「そんな言葉、使っちゃだめ」なんて言う。
どんどん歪むあの子の顔。
どんな表情でさえ、綺麗だ。
きっと、あの子は汚れていないから。
きっと、あの子は私とは違う世界に住んでいるから。
「私と貴女は一緒にいちゃだめだよ」
「どうして」
「貴女は汚れを知らないから」
「君も私と同じよ、汚れてなんかいない」
どうして私の事で涙を流せるの?
「死ねなんて言葉、君は使っちゃいけない」
金髪と黒髪が靡く、マンションの屋上。私たちの秘密の場所。
「私たちが生きるには、この世界は汚すぎる。そう、思わない?」
あの子は言う。
「汚い人間が君の綺麗な心を奪おうとするから、君は嫌がらせを受けるの」
あの子は金髪を揺らして振り返り、私の頰をなでる。
「君は美しいよ」
柵を越えたこの秘密の場所は、視界を遮るものが何も無く街を見下ろす。
いつの間にか泣いていた。
少し困ったようにあの子は微笑んだ。
そして、私の左手を掴んで呟く。
「生まれ変わったら、幸せになろう?」
これが汚いこの世界への、小さな反抗。
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