青年にとって〝狸様〟は守り神だったのか?

 夢野久作の『いなか、の、じけん』のごとき滑稽なおぞましさ。
 追い詰められた愚鈍な若者が、すべてに優先して守ろうとした狸様さえ彼を狂った道徳や倫理が生きる共同体へ縛りつける呪いだったのではあるまいか。
 後味は最悪ですが、反吐が出るほど美しい佳品です。
 この系統の短編をもう何作か書いてくださることを期待しております。