ねぇ神様、非戦闘スキルでどうしろと?

@shuramaru

第1話

都内にある某高等学校に通っている|上島悠介(かみじまゆうすけ)は小学校に上がる前に両親が事故に遭い他界し今は親戚のアパートで一人暮らしをしている。


「さてと、今日の夕ご飯は何にしようかな」


 悠介はそう言いながら、お気に入りのエプロンを身につける。

両親のいない悠介は生活の全てを自身でしなければならないからだ。


「あ、そうだ。朝のZOPでやっていたローストポークなんてどうかな。」


 戸棚からフライパンを出し用意してあった豚肉をゆっくりと火にかける。

肉の表面には狐色の焼き目が付いてきて、火からあげて均等に切ってみると、そこにはぷるっぷるの脂と引き締まった肉が綺麗な層になっていた。


「よーし、完成だ。あとは器に盛り付けて……」


 こうして、悠介の夕ご飯は完成した。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ふー、食べた食べた。今日はもう片付けて寝るだけだから、早く片付けちゃお」


夕ご飯のローストポークを食べきった悠介は早く寝るために片付けを始める。

 悠介以外誰もいない部屋には食器を洗うカチャカチャという音が響く。

しばらくしてその音が止まる。


「片付けも終わったことだからさっさと寝るかな」


寝巻きに着替えた悠介は両親の仏壇に手を合わさる。


「お父さん、お母さん、今日も1日元気でいられました。これからも天国で見ていてください。」


両親に今日のことを話し終わった悠介はゆっくりと自室のベッドに向かう。

ベッドに寝転びそっと悠介の意識は薄れていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 悠介が片付けを終わらせる少し前、何もなくただ真っ白な空間にこの世界で神と呼ばれているものは何やらブツブツと独り言をしていた。


『全く、エドラスの爺さんも困ったもんだい。文明発展のためにうちから誰か寄越せとか。

 さてまぁ、どうしたもんかいな……。悩んでいても仕方ないか、ここは簡単にくじ引きで』


神は、地球上の全ての人間の名前が書かれたものが入っている箱を取り出した。

そして、迷いなく箱に手を伸ばす。


『よーーし、こいつじゃ!!』


 神はそう大声で言った。その手には一枚の紙が入ってあった。


『ふむ、上島悠介か。ただの日本人をそのまま異界の地に行かせるのも悪いしな、取り敢えず戦えるスキルをあげるとするかな』


神は慣れた手つきで余所見をしながら棚から戦闘スキルを取り出した。


『後はこの者を呼べば良いのじゃな』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ベッドに寝転び意識を絶った悠介だったが寝ていながらも、急に周りが明るくなったことに気がつき意識を呼び戻す。

悠介が意識を鮮明にするのにはさほど時間はかからなかった。気がつくと自分は知らない場所にいて、そこには又知らない老人が胡座をかいている。


『起きたか、少年…いや上島悠介よ』


「爺さん、あんた誰だ。で、此処はどこだよ。」


『ワシは、この地球を納めている神じゃよ。そのまま爺さんでも構わんよ。

 で、此処はお主らとは違う時間軸の世界だ。異次元とでも思ってくれ』


「じゃあなんで俺はこんなとこにいる」


『そうじゃな。まずは初めから話させてもらう。

 地球とは違う世界、エドラスという世界になわしの友達がいるんじゃよ。そこはこの世界とは違って文明があまり発展していなくてなそこでこちらから一人エドラスに送ることになったのじゃ。

 で、簡単にくじ引きで選んだ場合君が選ばれたわけだ。』


「成る程な、でもただの日本人をそのエドラスとやらに行かせたところですぐ死んで終わりだよ」


『そうじゃろそうじゃろ、そう思うじゃろ。そこでだ君にはあちらに行っても死なないようにスキルを授けることにしたのじゃ。

 安心してくれ、とんでもない物を用意したからの。これなら大丈夫か?』


「そうだな、でも死ぬ可能性もあるだろう」


『そ、そうじゃな。ではこれでどうだ。お前に私の加護をとエドラスの神の加護を与える。

 それならよほどのことがない限り死なないよ』


「まぁ、断れないのだろうし、仕方がない行くとするよ」


『良いかあちらに行ったらまず、ステータスオープンと念じるのじゃ。じゃあ頑張れよ』


 爺さんが言い終わると悠介の視界は暗転し少しすると再び光が戻ってくる。

しかし、おかしい。悠介はそう思った。地面の感覚がないのだ。


「おいおい爺さん、こりゃないよ。」


地面よりかなり高い位置に転移された悠介は瞬く間に地面に向かって落ちていく。


風を切る音が聞こえ瞬きをするとその都度地面が近くなっていく。

 悠介がぶつかると思ったその時


「あれ?痛くない」


あれほど高くから落ちれば死んでいてもおかしくなかった。しかしこれは現実だ。取り敢えず爺さんに言われたことをするか。

 悠介は心の中でこう念じる。


  “ステータスオープン”


 ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー

 上島悠介


 LV ***


 HP 5555/999999

 MP 999999/999999


 スキル 神々の加護 |王の法書(ルールブック) 万能調理師 錬金術


 ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー


「あの爺さん、あとちょっとで死ぬとこだった。ん?てか何処に戦闘のためのものが?」



 『少年よ済まぬ。入れるスキル間違えちゃった』



 おいおい、ふざけてくれるな爺さんよ…………


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ねぇ神様、非戦闘スキルでどうしろと? @shuramaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る