4.初日終了

入学式が無事に終わり、両親に別れを告げた僕はミアと一緒に教室へ向かった。ほとんどの人がどことなくそわそわした表情で教室に向かっている。というのも、今日は授業はないが、寮の部屋割りが担任の先生から伝えられるからだ。基本3人1部屋で過ごすことになり、よほどのことがない限りは卒業まで、その3人で過ごすことになる。さらに、授業でのグループワークも基本的にそのメンバーになるため、皆多少の不安はあるものの楽しみにしているのだ。


教室に着き、特に指定がなかったのでミアと隣同士で座ってしばらく話していると、教室に担任の先生が入ってきた。


「こんにちは。このクラスの担任になったマール=クリプトです。マール先生って呼んでくださいね。よろしくお願いします。」


「「「よろしくおねがいしまーす!」」」


先生が自己紹介をするとクラスの全員が声を合わせて声を上げた。その後、先生の指示で自己紹介を始めた。しかし、1クラス200人と、地球では考えられないほど大勢いるため全員が自己紹介をすると1人1分程度でも3時間以上かかってしまうため10人から15人程度のグループを作って自己紹介をする。最初の何日かは授業も無く、その都度メンバーを変えて自己紹介をして終わるそうだ。

全グループが自己紹介を終えたあと、先生がひとりひとりに紙を配った。そこには建物の見取り図のようなものが描かれており、その中の一つの部屋に丸がつけてあった。先生の説明によるとこれは寮の地図らしく、丸がついているところが自分の部屋だそうだ。寮は7階建てで全4棟(A~Dで分けられていて、クラスに対応)あり、僕の部屋はA棟の3階の端だった。基本は3人1部屋なのだが1クラスが200人のため、1つだけ2人部屋ができることになる。そして偶然にもその2人部屋は僕のミアが使うことになった。


寮の部屋は2人で使うには意外と広い造りになっていた。というのも寮の構造的に2人部屋と3人部屋は同じサイズになっているからだそうだ。部屋には2段ベッドと小さめのテーブルが1つ置いてあるほかは何もなかった。


「すごい広いね!でもベッドとテーブル以外何も無いね!」


「何も無いとか言っちゃダメだよミアちゃん…。でも自由に使える場所多いから嬉しいね。」


そんなことを話しながら2人で部屋に入り、しばらく会話しているうちに夕食の時間になった。夕食は寮内の食堂で食べることになっていて、混雑を防ぐためかバイキング形式だった。味はとても美味しいという訳では無いが普通に満足できる美味しさだった。


夕食を終え部屋に戻るとすぐに入浴の時間になった。各部屋にも風呂が備え付けてあるが寮には2つ大浴場があり、どちらを使ってもいいことになっていた。大浴場は当然男女別なので、裸の女の子だらけの空間にはとてもいられない僕は部屋でひとりではいることにした。


「あったかぁい。やっぱお風呂は気持ちいいなぁ。」


そうしてひとりで温まっていると、


「入るね~。」


「えっ!?」


急にミアがお風呂に入ってきた。

突然の出来事に思考が停止した僕はミアが体を洗い始める光景から目を離すことも忘れ、ただぼんやりと見ている事しか出来なかった。


ミアが全身洗い終わり、浴槽に入ってきたことでようやく僕は自我を取り戻した。そのまま風呂から上がろうとした僕だったが、


「私友達と一緒にお風呂はいってみたかったんだ~。」


というミアの無邪気な言葉を聞いた僕は、恥ずかしさを押し殺して入っている事しか出来なくなった。


風呂を上がったあと少し話しているとすぐに就寝時間になった。寮内の灯りは全ての部屋が魔法で一括管理されている。そのため完全消灯後は二人共そのまま素直に眠ることにした。自覚はなくてもよほど疲れていたのか目を瞑るとすぐに押し寄せてきた眠気に逆らうことなく眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女々しい僕の転性記 熾埜 @Cano-pus

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ